保安院分離でうごめく“解体論”<br />経産省の組織、政策、人材を徹底検証

「まさか“経産省解体”みたいな特集でもやるんですか? でも、どうせやるなら世の中に迎合するんじゃなく、どうすれば産業が強くなるか、という視点を見せて欲しい」(経産省幹部)

 そのまさかで今回、我々がフォーカスしたのは8000人以上もの職員数を誇るスーパー経済官庁、「経済産業省」。きっかけは震災後の一連の原発行政ですが、そもそも「経産省とはなんぞや?」という疑問が浮かんだからです。

 経産省が所管する業務や業界の範囲は広く、カバーする産業もとにかく多岐にわたります。ゆえに、国土交通省に次いで2位の天下りポスト数を確保しているわけですが(本誌40ページ参照)、とかく全体像がわかりにくい。

 加えて、特に2000年以降、顕著になってきたのが“経産省不要論”。それもそのはず、所管する産業の規制緩和を推し進めてきた結果、自らの政策が及ぶ範囲を狭める結果になってしまったからです。

 こうした問題意識をもとに、「経産省の現状」と、「今求められる役割は何か」という視点で取材を進めていくなか、ぶつかったのが官邸周辺で検討が進んでいるという“解体論”でした。そのなかには、一部強硬派による懲罰的ともとれる“完全解体”案まで浮上しています。

 もちろん経産省側も、これまで手をこまねいていたわけではありません。今回、本誌インタビューに応じた前事務次官の松永和夫氏は、「そもそも震災前から経産省は政策の大きな転換点を迎えていた」と言います。

 そこで経産省は、昨年6月「産業構造ビジョン2010」を策定、これからは国が市場の前面に出ていくという政策に大きくシフトしています。その方向性の是非については、本特集で徹底検証します。

 さて8月18日時点で、海江田万里経産相が民主党代表選への出馬の意向を固めたと報じられました。本誌インタビューでは、とにかくタバコの本数が多かったことに驚きましたが(苦笑)、菅直人首相との齟齬や今後の経産省のあり方について、多いに語っていただきました。

 経産省の問題点を内部から訴え続ける古賀茂明氏のインタビューと併せて、ご一読ください。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 池田光史)