ソフトバンクグループ代表の孫正義さんは、「自然エネルギー財団」の本格始動に際して「アジア・スーパーグリッド構想」をぶち上げた。財団づくりを全面支援してきた立場だから言うわけでなく、これは、アジア共同体の礎にもなり得る壮大なプロジェクトだ。今、官民挙げて日本のエネルギー政策は大きく前進しつつある。

 9月12日、いよいよ本格始動する「自然エネルギー財団」の設立イベントが開催された。

 この財団は今年4月、ソフトバンクグループ代表の孫正義さんによる「世界の100人の科学者を集める」という構想からスタートした。自然エネルギーに関する研究や政策提言をするシンクタンクである。私は構想時から、組織作りなど全面的にサポートしてきた。

 なぜ世界の科学者100人を集める必要があったのか?

 それは、これまで日本に、自然エネルギーに関するまともな研究所や財団がなかったためだ。せいぜい、われわれISEP(環境エネルギー政策研究所)ぐらいだろう。多くの機関は、戦争用語で言うと「塹壕型」――つまり、日本に引きこもり潜望鏡から世界の様子を見るばかりで、世界的に通用するリアルなネットワークを持っていなかった。当然ながら世界からも無視されてきた。

 しかしこの自然エネルギー財団には、狙いどおり国内外から100人超のビッグネーム、かつホンモノの専門家を結集できる見通しで、まさに“イノベーション・ネットワーク”が築かれつつある。世界に向けて価値を発信できる機関となりそうだ。

 そのシンボルの一つが、財団理事長に、スウェーデンの現役エネルギー庁長官であるトーマス・コバリエル氏をリクルートできたことだろう。

 彼が引き受けてくれた背景には、色々な要因がある。

 世界から見ても日本が直面する福島原発の問題は非常に大きいこと、またこの財団が大きな役割を果たせる可能性を持っていること、さらに私が個人的に20年来の付き合いがあったこと、そして何といっても、孫正義氏の私心なきイニシアチブと「歴史を変えよう」というお誘いの言葉であろう。