北朝鮮の核保有国化に日本の持つ対抗手段が無力な理由写真:労働新聞(電子版)より

 北朝鮮は8月29日午前5時58分頃、中距離弾道ミサイル「火星12」の発射実験を行った。このミサイルは北海道南部の渡島半島と襟裳岬上空約500kmを通過、同岬の東方約1180kmの太平洋に落下した。

 次いで9月3日午後0時29分頃には咸鏡北道豊渓里の地下核実験場で6回目の核実験を行い「弾道ミサイルに搭載できる水爆弾頭の実験に完全に成功」と発表した。

 日本では弾道ミサイルの北海道上空通過に大衆は強い反発を示したが、実は水爆実験の方が大きな危険だ。米国と北朝鮮の威嚇競争が一段とエスカレートしかねないだけでなく、日本にとっても北の「核保有国」化が現実のものになりつつあり、第二次大戦後、最悪の危機局面だ。

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 8月29日の「火星12」の発射実験では、ミサイルの高度は550kmに達し、北海道の上では軌道の頂点を過ぎていたが、500kmはあったと考えられる。

 この高度では、日本の領空とはいえず、「領空侵犯」と非難はできない。

 宇宙がどの国にも属さないのは自明のことだ。地球は自転していて、北海道上空の宇宙は1時間後には中国上空になるからだ。

「空気のある所までは領空」との定義にはどの国も反対していないが、徐々に空気は薄くなるから、領空と宇宙との線引きは困難だ。このため「人工衛星が飛ぶところは宇宙だろう」との説が何となく一般化した。人工衛星には最低高度が100km程度で周回した物もあったから「一応100kmまでは領空」と言われてきた。