「延命治療」を親に強いるのは圧倒的に50代息子が多い理由写真はイメージです

高齢の親を看取る際、本人が延命措置を拒否している場合でも、無理に延命治療を強いるのは圧倒的に50代の息子が多いという。その理由は何か。本人はもとより、家族や親戚の皆が納得する看取りを行うにはどうしたらいいのか。2006年の開業以来、2000人以上を看取り、在宅医療に力を入れる「めぐみ在宅クリニック」の小沢竹俊院長に聞いた。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

この役立たず!
長男は医師を怒鳴りつけた

 鼻に人工栄養の管を差し込まれたまま、弱々しい呼吸を続けていたAさん(80代)だったが、その時ついに、息が、静かに止まった。

 臨終を確認しようと医師が手を伸ばした時だった。

「この役立たず!何をしているんだ、とっとと救急車を呼べよ。生き返らせろ」

 長男(50代)が立ち上がり、憤怒の形相でスマホを突き付けてくる。

 医師は仕方なく、その場で救急車を呼び、病院に到着後、死亡診断書を書いた。

 Aさん(80代)は脳の悪性腫瘍を患い、この数ヵ月間、闘病生活を送ってきた。当初は総合病院に入院し、治療を受けていたが終了。緩和ケア病棟がある病院への転院を勧められたが、本人の強い希望により、自宅での療養となった。家族の献身的な介護と、在宅ケア専門クリニックのサポートにより、淡々と、しかし穏やかな毎日を過ごしてきた。なんとか食事が摂れるよう医師は内服薬を工夫し、家族はまるで命を補うように、小さなスプーンで一匙一匙Aさんの口元に食べ物を運んでいたという。

 だが、次第に薬の効果も得られなくなり、Aさんは一切の食事を受け付けなくなった。こうなったらもう穏やかな死を迎えるためには、食事も、薬も、栄養の点滴も行わない方がいい。