ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
こだわり蕎麦屋めぐり
【第7回】 2011年10月14日
著者・コラム紹介バックナンバー
鎌 富志治 [夢ハコンサルティング代表]

恵比寿「丁未 坂」――和食と本格フレンチにワインと蕎麦。ちょっと欲張りな大人の隠れ家

1
nextpage

和食も楽しめる。本格のフレンチも味わえて、ワインストックは常時100本余り。それが蕎麦屋というから驚きだ。連載第7回はそんな異色の蕎麦屋、恵比寿「丁未 坂」を紹介したい。落ち着いた大人のための空間で、唯一無二のコース料理は極上のもてなしになるだろう。

100店以上の蕎麦屋を巡り、出会った本当の蕎麦
“蕎麦の香りが鼻を抜ける“感覚を初めて味わった

 平成8年の頃、蕎麦の特集本がブックセンターの店頭に並び、その本をガイドにして蕎麦好きが店を訪ね歩いた。スポットライトを浴びた店には客が並び、店に入るのに2時間待った、などと今から考えると信じられないような話がいくつもあった。ちょうど、第二期手打ち蕎麦屋ブームだった。

 恵比寿「丁未(ひのとひつじ)・坂」の亭主、坂宜則さんは、その頃、全国の蕎麦屋を訪ねて回る旅を続けていた。まだ蕎麦職人になる前のことだ。車で回遊すること2年間、旅はいよいよ終盤を迎えようとしていた。訪ねた蕎麦屋は、とうに100店を超えていた。

「丁未・坂」。蕎麦屋の匂いもしつつ、和食と僅かにフレンチの雰囲気もある構え。隠れ家のように佇む。大人を接待できる店だ。

 “蕎麦の香りが鼻を抜ける”――。蕎麦好きが言う、その感覚が100店を回ってもまだない。“自分は鈍感なのだろうか”、そのことが腹立たしかった。

 この日は群馬の箕郷に来ていた。その蕎麦屋までは地元の人でも車でないと来られないような不便な場所にあった。

 門構えはいたって平凡なその店の屋号は「せきざわ」※1。蕎麦本の評価は最高点の三つ星だったが、これまで沢山の蕎麦屋を訪ね歩いてきた坂さんは、それほど期待もしていなかったという。

 しかし、蕎麦が目の前に運ばれてきた時、坂さんはこれまでにない感覚に一瞬戸惑った。

 蕎麦の匂いが箸を持つ前に彼の顔を包んだ。蕎麦を2本ほどつまんだが、口に含んでもその香りは消えない。噛むのがもったいないように感じ、まるでワインの試飲のように暫くほぐほぐと口に含ませた。蕎麦の香りが口中はもちろん、鼻腔にも喉にも押し寄せてきたところで噛みしだいた。

 「初めて本当の蕎麦に出会ったような気がしました。蕎麦行脚で自分の味覚感性は人に劣っていないと確認できました」――、坂さんが蕎麦の香りを喉で感じた瞬間だった。

※1 せきざわ:かつて群馬・箕郷町で名店といわれた「せきざわ」は、2005年の12月に長野県の小布施町に移店した。長野県栄村にある自家栽培の蕎麦畑と隣接したところで営業したいというのが理由だった。現在でも開店前には行列ができるくらいで、人気は変わらず、観光名所的な店になっている。

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
自分の時間を取り戻そう

自分の時間を取り戻そう

ちきりん 著

定価(税込):本体1,500円+税   発行年月:2016年11月

<内容紹介>
生産性は、論理的思考と同じように、単なるスキルに止まらず価値観や判断軸ともなる重要なもの。しかし日本のホワイトカラー業務では無視され続け、それが意味のない長時間労働と日本経済低迷の一因となっています。そうした状況を打開するため、超人気ブロガーが生産性の重要性と上げ方を多数の事例とともに解説します。

本を購入する
ダイヤモンド社の電子書籍
(POSデータ調べ、11/20~11/26)


注目のトピックスPR


鎌 富志治 [夢ハコンサルティング代表]

大手広告代理店で営業局長やプロモーション局長を歴任後、東京・神田須田町で手打ち蕎麦屋「夢八」を開店する(現在は閉店)。現在は企業経営コンサルタント、蕎麦コンサルタントとして活躍中。著書に『こだわり蕎麦屋の始め方』(ダイヤモンド社)がある。
◎ブログ:蕎麦の散歩道


こだわり蕎麦屋めぐり

酒と料理と極上の蕎麦。思わず誰かを連れて行きたくなる、五つ星のもてなしが楽しめる手打ち蕎麦屋。蕎麦が美味いのは当たり前、さらにはそこでしか味わえない料理ともてなしがある店ばかりを厳選。付き合いや接待に良し、大事な人と大事な日に行くも良し。店主がこだわり抜いた極上店の魅力とその楽しみ方を紹介する。

「こだわり蕎麦屋めぐり」

⇒バックナンバー一覧