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上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

なぜ民主党内からはTPP反対派の声ばかりが大きく聞こえてくるのか

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第22回】 2011年11月9日
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 野田佳彦首相は20ヵ国・地域(G20)首脳会議で、「消費税率引き上げ」を国際公約として表明した。依然、増税には党内外で根強い反対論がある。だが、野田首相は「法案成立前には衆院解散・総選挙に踏み切らない」という考えを示した。これは、野党・自民党を「早期の解散総選挙要求」の倒閣路線一辺倒から、「不人気な増税政策を、まず野田内閣に処理させてから、政権交代を目指す」方向へ変えるかもしれない。これは、野田首相が目指す増税実現の可能性を広げる発言といえる。民主党政権は、財務省絡みの政策課題については、したたかさに前に進めている。

 一方、野田首相は、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加という、もう1つの大きな政治決断の局面を迎えている。これもAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議という国際舞台で表明する意向だ。しかしTPPについては、今後も難局が続きそうだ。

TPP参加反対派が大暴れする
民主党政務調査会

 前回、野田内閣が税制改革を実現するための「秘策」として、抵抗勢力になりがちな政調会を改革推進勢力に変えるために、改革の原案を党政務調査会に作成させることを提案した(第21回)。民主党政調会はプロジェクトチームを設置し、交渉参加問題の調整をほぼ連日協議している。野田首相のAPEC首脳会議でのTPP参加表明のために、政調会は党内意見の集約を急いでいる。

 だが、民主党政調会は完全に反対派が支配している。まず、反対派は貿易自由化で打撃を受ける農業分野を懸念する。TPPが目指す「聖域なき関税化」が実現したら、米国やオーストラリアの大規模農業が日本に本格参入し、日本の農業が崩壊する。特に、米作農業が絶滅する。また、食料の安全性が維持できなくなる。約4割の食料自給率も14%まで低下し、食料安全保障上の問題もある。自由化で失われる農業所得を国が補償する場合、財政負担が巨額になる、などの反対論がある。

 また、TPP参加によって、米国が日本に対して金融や保険、医療などの市場参入を狙い、「国民皆保険制度」が維持できなくなるという。「ゆうちょ銀行」や「かんぽ生命保険」に対する政府の庇護が撤廃させられる。公共事業への海外企業の参入が増えて、地方の建設会社の次々倒産する、とも言われている。外国人労働者の大量流入を心配する声もある。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

国際関係、国内政治で起きているさまざまな出来事を、通説に捉われず批判的思考を持ち、人間の合理的行動や、その背景の歴史、文化、構造、慣習などさまざまな枠組を使い分析する。

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