東京理科大学学長の藤嶋昭氏が、2017年度「文化勲章」を受章した。
藤嶋氏が開発した「光触媒」は、今年で発見50周年を迎える。
東海道・山陽新幹線「のぞみ号」の光触媒式空気清浄機、成田国際空港の光触媒テント、パナホームの一戸建て、日光東照宮の「漆プロジェクト」から、ルーブル美術館、クフ王の大ピラミッド、国際宇宙ステーションまで、光触媒の用途はとどまることを知らない。日本だけでなく世界へ宇宙へと広がっているのだ。
2020年東京五輪で「環境立国」をうたう日本にとって、光触媒は日本発の世界をリードするクリーン技術の生命線。酸化チタンに光が当たるだけで、抗菌・抗ウイルス、防汚、防曇、脱臭、大気浄化、水浄化など「6大機能」が生まれるので世界中で重宝されている。これからの時代、文系、理系を問わず、光触媒の知識が少しあるだけで、あなたは羨望の眼差しを受けるかもしれない。文化勲章受章まもなく発売され、注目を集めている『第一人者が明かす光触媒のすべて――基本から最新事例まで完全図解』の著者を編集担当が直撃した(構成:寺田庸二)。

八重洲口「グランルーフ」、<br />ダラス10万人スタジアム、<br />「ポンピドゥー・センター・メッス」、<br />世界中で活躍する○○テントとは?

「グランルーフ」の光触媒テント

八重洲口「グランルーフ」、<br />ダラス10万人スタジアム、<br />「ポンピドゥー・センター・メッス」、<br />世界中で活躍する○○テントとは?藤嶋 昭(Akira Fujishima) 東京理科大学学長 1942年生まれ。2005年、東京大学特別栄誉教授。2010年、東京理科大学学長(現任)。【おもな受賞歴】文化勲章(2017年)、トムソン・ロイター引用栄誉賞(2012年)、The Luigi Galvani Medal(2011年)、文化功労者(2010年)、神奈川文化賞(2006年)、恩賜発明賞(2006年)、日本国際賞(2004年)、日本学士院賞(2004年)産学官連携功労者表彰・内閣総理大臣賞(2004年)、紫綬褒章 (2003年)、第1回The Gerischer Award(2003年)、日本化学賞(2000年)、井上春成賞(1998年)、朝日賞 (1983年)など。オリジナル論文(英文のみ)896編、著書(分担執筆、英文含む)約50編、総説・解説494編、特許310編。

 また、テント膜材が本来持つ美しく自由なデザインと、光触媒の環境にやさしい機能が調和する建築物として、多くの商業施設や多目的施設で採用されています。

 東京駅八重洲口の新たなシンボルとして2013年9月にオープンした「グランルーフ」にも光触媒テントが使われており、光をやわらかく透過する膜材の性質を活かし、夜間には照明のライトアップ効果で都市にふさわしい美しい景観の創出にも貢献しています。
  太陽工業によれば、国内で手がける恒久的な建築用膜構造施設の約9割に光触媒テントが採用されるほど圧倒的な支持を得ています。

 光触媒テントは、海外でも広く使われるようになってきています。
 2014年にブラジルで開催されたFIFAワールドカップのスタジアムの屋根アメリカ・テキサス州ダラスの約10万人が観戦できるアメリカンフットボールスタジアムなどが有名です。

「ポンピドゥー・センター・メッス」は日本人が設計

 また、フランス・パリにあるポンピドゥー・センターは世界有数の文化美術センターですが、その分館としてロレーヌ地方の都市メッスに2010年に完成した大型膜構造施設「ポンピドゥー・センター・メッス」は、光触媒テントを使用した大型膜構造施設としてはヨーロッパ初でした。

  意匠設計は日本人建築家の坂茂氏によるもので、機能性と合わせて膜材の特性を活かしたやわらかい曲線の屋根形状となっており、その表面積は約8000平方メートルに及びます。

 夜間には内部からの照明効果で、特にすばらしい景観になるので、ぜひ一度訪れて、日本発の光触媒技術と日本人建築家が出会い、ヨーロッパに新しい文化センターが生まれたことを祝福したいものです。

 空港で、光触媒テントとして使われたのが、1994年の米国コロラド州のデンバー国際空港、2004年のクロアチアのスプリット空港、2014年の英国ロンドンのヒースロー空港などが知られていますし、日本では成田国際空港にも使われています。
 空港以外でも、ドイツ、ギリシャ、トルコ、スペイン、中東、オーストラリアへと、光触媒テントは世界各地に広がりつつあります。

 光触媒を発見して今年で50周年。いまや東海道・山陽新幹線の光触媒式空気清浄機、成田国際空港の光触媒テント、パナホームの一戸建てからクフ王の大ピラミッド、ルーブル美術館、国際宇宙ステーションまで、その活躍の場は多岐に及んでいます。

藤嶋 昭(Akira Fujishima)
東京理科大学学長
1942年生まれ。1966年、横浜国立大学工学部卒。1971年、東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。1971年、神奈川大学工学部専任講師。1975年、東京大学工学部講師。1976~77年、テキサス大学オースチン校博士研究員。
1978年、東京大学工学部助教授。1986年、東京大学工学部教授。2003年、財団法人神奈川科学技術アカデミー理事長。2003年、東京大学名誉教授。2005年、東京大学特別栄誉教授。2010年、東京理科大学学長(現任)。現在、東京理科大学光触媒国際研究センター長、東京応化科学技術振興財団理事長、光機能材料研究会会長、吉林大学名誉教授、上海交通大学名誉教授、中国科学院大学名誉教授、北京大学客員教授、ヨーロッパアカデミー会員、中国工程院外国院士。これまで電気化学会会長、日本化学会会長、日本学術会議会員・化学委員会委員長などを歴任。
【おもな受賞歴】文化勲章(2017年)、トムソン・ロイター引用栄誉賞(2012年)、The Luigi Galvani Medal(2011年)、文化功労者(2010年)、神奈川文化賞(2006年)、恩賜発明賞(2006年)、日本国際賞(2004年)、日本学士院賞(2004年)産学官連携功労者表彰・内閣総理大臣賞(2004年)、紫綬褒章(2003年)、第1回The Gerischer Award(2003年)、日本化学賞可(2000年)、井上春成賞(1998年)、朝日賞(1983年)など。オリジナル論文(英文のみ)896編、著書(分担執筆、英文含む)約50編、総説・解説494編、特許310編。