管理人不足がサービスの低下に直結
慢性的な人手不足は、マンション管理業界にも大きなダメージをもたらしている。いまだ管理人を置く分譲マンションは少なくないが、人材確保が年々困難となり、業務が回らなくなっているのが実情だ。
「管理人不足は、居住者に提供するサービスの低下に直結します。実際、『集会室や来客用駐車場といったマンションの共用施設を予約したいのに、管理人と連絡が取れなくて困った』といった声をよく耳にします」と語るのは、分譲マンション向けのDXソリューションを提供するセーフティ&ベルの宇佐見聡代表取締役社長である。
セーフティ&ベル 宇佐見 聡代表取締役社長
サービス低下の理由は、人手不足ばかりではない。管理業務そのもののデジタル化が進んでいないことも、不便や煩わしさを招く原因となっているようだ。
「共用施設を予約する場合、通常は対面や電話で申し込み、管理人はノートに書き込むなどしてスケジュールを管理します。当然、管理人の業務時間以外には申し込めませんし、手書きでは記入漏れや書き間違いなども起こりやすい。アナログによる管理には限界があるのです」と語るのは同社マンションポータル事業部の中務史朗事業部長だ。
セーフティ&ベル マンションポータル事業部 中務史朗事業部長
社会全体で見れば、業務やサービスのデジタル化は急速に進んでいるが、マンション管理のDXは意外と遅れている。
その大きな原因の一つは、「余分な費用はなるべく負担したくない」という管理組合や居住者の意向が強いことだ。
「効率化を促すデジタルサービスは幾つもありますが、いずれも費用がかかるので、管理組合の理事会から承認が下りないケースが珍しくありません。だったら、無償で提供できるサービスを開発してはどうかと考えたのです」(宇佐見社長)
それが、セーフティ&ベルが提供する〝管理費負担ゼロ〟のマンションDXソリューション、「ベルシェルジュ」である。
2025年からサービスの提供を開始した「ベルシェルジュ」は、オンラインによる共用施設の予約・決済、マンションの行事や案内を告知する電子掲示板、理事会メンバー同士のコミュニケーションに役立つチャット機能など、さまざまなデジタルサービスが一つのポータルで利用できるソリューションだ。
これらのサービスが、全て無料で使えるというのだから、管理組合にとって導入のハードルは低い。実際、サービス開始から1年ほどで、東京・大阪・名古屋を中心に約30棟、約3500戸の分譲マンションが導入し、現在も増え続けているそうだ。
有益な情報が得られ、生活の利便性も高まる
なぜ、多彩なデジタルサービスを無料で提供できるのか。
その理由は、サービスを利用する分譲マンションの居住者向けに「ENTLINK(エントリンク)」というフリーペーパーを発行し、その広告収入をサービス運営に充てているからだ。
「年4回発行する『ENTLINK』には、SDGsをテーマとした生活に役立つ情報を掲載しています。広告主の製品・サービスに関する情報も記事として紹介しており、快適でエコなマンションライフを楽しむための情報源としてご好評を頂いています」(中務事業部長)
ENTLINKはオンラインでも読むことができる
有益な情報が入手できて、マンションライフの利便性を高める各種デジタルサービスも利用できるのだから、居住者にとってはまさに“一石二鳥”である。
ちなみに「ENTLINK」は、「ベルシェルジュ」を利用する分譲マンションの居住者だけでなく、セーフティ&ベルがインターホンやオートロックのリニューアル工事を行った全国の分譲マンションの居住者、約1万世帯にも配布。今後、さらに約3万5000世帯にも年4回配る予定だという。マンション居住者に製品・サービスを認知させたい企業にとっては、格好の広告媒体だといえそうだ。
そもそもセーフティ&ベルは、マンションのインターホンやオートロックのリニューアル工事で全国トップクラスのシェアを誇る電気設備工事会社である。
「長年にわたるお付き合いを通じて、業務面やサービス面でいろいろなお悩みを抱えているマンションが多いことを知りました。『ベルシェルジュ』には、われわれが現場でお聞きしたお悩みに基づき、実用的なサービスだけを採用しています」と宇佐見社長は説明する。
例えば、居住者向けのEVカーシェアリングもその一つだ。
マンションの駐車場にEVと充電スタンドを設置し、「ベルシェルジュ」で予約すれば利用できるサービスを提供。電気設備工事会社として培った技術と、最新のデジタルテクノロジーを融合させて、新しいサービスを次々と生み出している。
「今年から力を入れるのは『シェアリザーブ』というサービスです。家事代行やクリーニングといったサービスを、複数世帯がまとめて予約することで、1軒当たりの費用を安上がりにできる仕組みです。協力していただける業者さんを増やし、新たなサービスの目玉にしていきたい」と宇佐見社長。
一方、管理の利便性を向上させるサービスとしては、理事会の議事録など、紙の資料を電子化する「保存箱」だ。また保管スペースの解消と検索性の向上を実現する「ベルシェルジュスキャン」と「ベルシェルジュクラウド」は有償だが非常に使い勝手が良いと評判だ。居住者の利便性を最優先に考え、管理業務の効率化まで視野に入れていることも大きな魅力といえそうだ。
宇佐見社長は、「今年4月からアプリでサービスを利用できるようにするなど、使い勝手の改善も図っています。これからも居住者、管理会社の双方に有益なマンションDXを追求し続けていきたい」と抱負を語った。
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