成長に決定的に欠かせないこととは?

 運動科学の分野では、負荷と休息を交互に繰り返すことを「ピリオダイゼーション」と呼んでいる。

「ストレス」といっても、パートナーや上司と攻防戦を繰り広げることではない。重いバーベルでトレーニングするなどして体に刺激を与えることをいう。体の限界に挑み、時には筋肉が動かなくなる寸前まで体を追い込む。

 負荷をかけたあとに、体が思うように動かなくなることはよくある。あなたはハードなウエイトリフティングのあとに、腕がしびれて動かなくなった経験はないだろうか。

 だが、つらいトレーニングのあとに体を休ませて回復すると、体はその負荷に適応して強くなり、次回はもう少し重いバーベルを持ち上げられるようになるだろう。

 この緩急のサイクルは、次のような段階を経る。

1 鍛えたい筋肉や能力を選ぶ
2 その筋肉または能力に負荷をかける
3 回復するまで休息を取って、体を適応させる
4 1~3のプロセスを繰り返す。ただし、前回よりもやや強い負荷をかける

 ワールドクラスのアスリートは、この緩急のサイクルをうまく使いこなしている。

 ミクロレベルでは、ハードなトレーニングの日(休憩をはさみながら、疲労の限界寸前まで体を鍛える日)と軽いトレーニングの日(歩行者並みの速度でジョギングする日など)を交互に行う。

 トップレベルのアスリートは、競技場やジムでのトレーニング時間と同じぐらい、ソファやベッドで体を回復させる時間を大事にするのだ。

 また、マクロレベルでは、ハードなトレーニングを1ヵ月続けたあと、軽いトレーニングを1週間行ったりする。スケジュールを立てるときも、シーズン中の重要な試合は数試合だけにして、試合の後には必ず休息期間を設けて体と心の回復に努めている。

 さらに、プロのアスリートの生活を1日、週、月、年単位、そしてキャリア全体を通して見ると、負荷と休息を絶え間なく繰り返していることがわかる。

 負荷と休息のバランスが悪い人は、けがをするか燃え尽きるか(負荷ばかりで休息が足りない場合)、あるいは自己満足して伸び悩むか(休息ばかりで負荷が足りない場合)のいずれかだろう。

 だが、負荷と休息をバランスよく取れる人は、勝者として君臨し続けることができるのだ。