本連載では、話題の新刊『最先端科学×マインドフルネスで実現する 最強のメンタル』の内容から、エビデンスに基づいた最新科学の知見をもとに、現代人が抱える2大メンタル問題「ストレス」と「プレッシャー」を克服し、常に安定して高いパフォーマンスを発揮するための方法をお伝えしていく。
「ぼんやり脳」と「ピリピリ脳」
みなさんの周りには、いつも眠そうでボーッとしている人もいれば、常になにかに対して焦りを感じ、イライラ、ピリピリしている人、普段おっとりしているのに「ここ一番」では高い集中力を発揮する人、普段は冷静沈着なのに「ここ一番」でミスを連発してしまう人など、様々なタイプの方がいると思います。
実は、これらのタイプの違いには、脳の覚醒レベルが大きく関わっているのです。覚醒レベルという観点から人の脳を分類した場合、低覚醒タイプと高覚醒タイプに大別されます。
低覚醒タイプは、シータ波と呼ばれる雑念や眠気を帯びた脳波を多く含み、ぼんやりした脳の持ち主です。一方、高覚醒タイプは、ハイベータ波と呼ばれる興奮や緊張に関連する脳波を多く含み、ピリピリした脳の持ち主です。
もちろん、その中間の中覚醒タイプという人も希にいますが、基本的にどちらかに偏っています。
脳波とパフォーマンスの関係
シータ波、ベータ波など、一般の方にはあまり聞き慣れない言葉が出てきました。
これらは脳波の一種で、周波数の違いにより分類されています。ここで少し脳波のお話をしたいと思います。
脳波とは、脳内で発生する電気活動(シナプス電位変動)のことで、専用の脳波計とソフトウェアを使用することで、今現在の脳波状態の測定と分析が行えます。
ヒトの脳波研究の歴史は古く(1924年~)、今では睡眠研究、てんかんやADHDの診断、リハビリテーション、脳波を使って車いすなどを動かすブレイン・マシン・インターフェース(BMI)など、様々な分野に応用されています。
特に最近では、心理分析やメンタルトレーニングの一環として、脳波をコントロールすることでパフォーマンスを高めたり、リラクセーションを促す「ニューロフィードバック」と呼ばれる脳波トレーニングが欧米を中心に広がりを見せています。
脳波は、脳の波と書くように、海における波をイメージしていただくとわかりやすいと思います。
当然ですが、穏やかな波の海は、穏やかな海です。荒々しい波の海は、荒々しい海です。
脳波もこれと同じなのです。穏やかな脳波の人は、穏やかな精神状態であり、荒々しい脳波の人は、荒々しい精神状態なのです。
脳波が穏やかか荒々しいかは、アルファ波を基準に考えられ、シータ波は穏やかなタイプの脳波にあたり、ベータ波は荒々しいタイプの脳波に分類されます。
一般的にベータ波は、リラックスのイメージがあるアルファ波に対して、緊張やストレスのイメージがあるかもしれません。
しかし実際は、集中に関わるベータ波と、ストレスに関わるベータ波がそれぞれあるのです。ベータ波は、適度な集中からパニックと、覚醒全般に関わる範囲が広いのです。
ベータ波の中でも、波の速さが比較的穏やかなものはローベータ波(15~18Hz)と呼ばれ、仕事やスポーツなど高い集中を要求される時に役立つ脳波です。ローベータ波に対して、23Hz以上の速い脳波はハイベータ波と呼ばれ、ストレスやパニックに関連すると考えられています。
ローベータ波はパフォーマンスを高め、ハイベータ波はパフォーマンスを下げると捉えていただくとわかりやすいと思います。
脳波の速さに応じて、精神状態が変化しますから、それはつまり、脳波をコントロールすることで精神もコントロール可能というわけなのです。実際、ゆったりとした呼吸法を数分繰り返すと、脳波は穏やかになっていき、精神も落ち着いていきます。