いろいろな禁煙製品を試しても
タバコを止められない
中堅ゼネコン勤務Eさん(45歳)

心優しい末っ子に癒される日々

 Eさんには3人の息子がいる。いまどき3人も、と親戚にも驚かれる。女の子が欲しかったEさん夫婦は、女の子ができるまでと3人目まで頑張った。3人目のとき、産婦人科の超音波のモニターを見ながら「はい、元気な男の子ですねえ」という女医の発言には少しがっかりしたが、生まれてくれば我が子はやはり可愛いものだ。

 保育園に入っている末っ子はとても穏やかで細やかな性格だった。それは、やんちゃな2人のお兄ちゃんが、いつも母親に怒られていることを反面教師にしているからかもしれない。

 休みの日に疲れて昼寝をしていると、「お父さん大丈夫?」と必ず声をかけてくれる。たまに早く帰ると、「お父さんとお風呂に入れる。ワーイ」と甘えてくる。朝は、目覚める頃に布団に潜り込んできて、首に手を回して耳元で囁いてくれる。

「僕はお父さんの子に生まれてきて本当によかったよ。このおうちが大好きだよ」と、本当に幸せそうな笑顔で見つめてくれる。どちらかと言えばぶっきらぼうで無口な自分に、こんな子どもができたことが信じられない。Eさんは温かくて、ふわふわした自分の息子を抱きかかえるとき、幸せを感じる。息子を抱いて布団を出ると、朝の憂鬱な気持ちが少しやわらぐ気がした。

“蛍族”を返上、
居間でもタバコを吸う習慣に

 Eさんはまるでアルコールが飲めない。その代わりというわけではないが、学生時代からヘビースモーカーでタバコが手放せなかった。多い日は1日2箱。起きている間は、ほとんど煙を出している状態だ。

 上の子が小学校に上がるときに、夫婦で貯めた貯金を頭金にして郊外の中古マンション買って自分たちでリフォームした。内装だけは新築同然になった。引っ越しした当時は、「タバコの臭いがあると、マンションの価値が下がる」と妻に言われて『蛍族』と呼ばれる人同様に、ベランダで吸っていた。引っ越しをしてはじめての冬、寒い夜に友達夫婦が遊びに来たときに「タバコは室内で吸わないで」とは言いにくく、それ以来、部屋の中でも吸うようになってしまった。

 最初は換気扇の下で吸っていたものの、段々と立ち上がるのが面倒になり、ソファでも吸うようになっていた。会社でも、レストランでも、移動の新幹線でも「分煙」「分煙」と言われ続けていたので、自宅でくらいはいいと思っていた。でも妻との喧嘩の原因は決まってタバコだった。

「あなた、子どもに煙をかけたから本当に離婚だから」。妻は、Eさんがタバコをくわえると同時に子どもを別の部屋に連れていき、窓を開けるのだった。