家庭のエネルギーを賢く管理する「スマートハウス」が本格的な普及期を迎えつつある。2020年には国内での市場規模が3兆5000億円になるという試算もある*。スマートハウスの普及に欠かせないのが「HEMS(ホームエネルギー管理システム)」と呼ばれるシステムだ。HEMSに関する標準化を推進している神奈川工科大学の一色正男教授に、スマートハウスの現状や将来の動向を聞いた。

*出所:経済産業省「スマートメーター制度検討会」(第11回、平成24年3月12日)配布資料
スマートハウスの普及で期待される新ビジネスとは一色正男
神奈川工科大学創造工学部ホームエレクトロニクス開発学科教授 スマートハウス研究センター所長

1956年東京都生まれ。大学卒業後、東芝に入社。世界初のホームITシステム「フェミニティシリーズ」の責任者として事業を立ち上げる。1982年東京農工大学大学院博士後期課程修了。工学博士。慶應義塾大学特任教授などを経て、2012年より神奈川工科大学教授。ECHONETコンソーシアム2008運営委員長(現フェロー)、経済産業省HEMSタスクフォース座長、HEMS認証支援センター長、スマートハウス研究センター所長などを務める

 IoT(モノのインターネット)やスマートフォンの普及に伴って、この数年で「スマートハウス」というキーワードが新聞や雑誌を賑わせるようになりました。過去にも何度かこの領域が注目されたことはありましたが、統合的な観点でスマートハウスが注目されるのは初めてです。

 どのような機能を備えた住宅をスマートハウスと呼ぶかは、時代によって変わってきました。1990年代のブームの時には、家庭内のLANに家電を接続して、テレビ画面で制御するような仕組みでした。「ユビキタス」というキーワードが注目を集めていた2000年代には、これにインターネットや携帯電話が融合した仕組みが注目されました。

 現在は、家庭のエネルギーを賢く管理する「HEMS(ホームエネルギー管理システム)」(注1)を備えた住宅がスマートハウスと解釈されるようになっています。HEMSというと「省エネ」のためのシステムだと思われる方が多いかもしれませんが、太陽光をはじめとする再生可能エネルギーを活用した「創エネ」や、大型バッテリーによる「蓄エネ」も、HEMSの重要な役割です。私は、HEMSによる「省エネ+創エネ+蓄エネ」の機能を駆使して、快適性や利便性などの生活価値を高める住宅、さらには「夢のある暮らし」を実現する住宅がスマートハウスだと説明しています。

(注1)HEMSとは
HEMS(「ヘムス」と読む)は、「Home Energy Management System」の略で、住宅においてエネルギーを管理する仕組みのことだ。特定の機器の名称ではなく、システム全体を指す。
HEMSの中で、家電などを制御する役割を備えた機器は、一般に「HEMSコントローラー」と呼ばれている。太陽光発電装置と蓄電池をHEMSコントローラーに接続して両者を連携させて、電力を蓄積したり、放電する仕組みが一例だ。