ルンバやドローン、そしてpepper、再発売されたaibo。これらはすべてロボットです。AIの発達とともに、現在、注目されているロボティクス。工業分野だけでなく、サービスや介護、エンターテインメント、そして家庭でも、AIを搭載したロボットが登場しており、これらを使いこなし、そして新しいビジネスに結び付けることが期待されています。今回は、ロボティクスの専門家である著者が、わかりやすく書いた新刊『ロボットーーそれは人類の敵か、味方か』の中から、エッセンスを抜粋して紹介します。

脳で思った動きを
補助するロボット

産学連携がうまくいったケースとしてあげられるのが、サイボーグ型ロボット「HAL®」(Hybrid Assistive Limb)です。筑波大学発のベンチャー企業、サイバーダイン(2004)により発売されました。「HAL®」は体に装着して使うロボットスーツです。動かしたいという脳からの信号が筋肉に送られ、その際に皮膚に漏れ出る生体電位信号をセンサーで感知し、動きをアシストするものです。

「HAL®」は,愛・地球博にも出展されていましたが、この頃はヒューマノイド全盛ということもあり、「機械だけで自律的に判断し動くこと」が重視されていたため、アシストスーツのように「頭は人間」というロボットは、あまり注目されませんでした。

現在では、「ハイレベルな部分の判断は人が行い、パーツに近いほうの判断を機械に任せる」というのが現実的な解だといわれるようになってきています。

例えば「歩く」という大元の判断は人間がし、その動きを腰や脚において「HAL®」がアシストするという形です。

「HAL®」が成功した要因を説明するために、いくつかある「HAL®」の中から二機種を取り上げてお話しします。まずは、作業中の腰にかかる負荷を減らす「HAL®作業支援用(腰タイプ)」です。国が主導し、国際規格づくりから関与しました。

ISO13482は、2014年にISO(国際標準化機構)から正式発行された「生活支援ロボットの安全性」に関する唯一の国際規格です。

この取得のために、日本の産業技術総合研究所が草案づくりから関わりました。
ISOの取得が重要なのは、その安全性を示すことができるからというだけではありません。製品を海外で売るための大きな足がかりとなるからです。

ヨーロッパのように、様々な国が国境を越えて製品を売る市場では、その製品がEU(欧州連合)加盟国の規格に適合していることが求められます。そして、その規格に適合している製品に付与されるのが「CEマーク」です。

CEマークを自社の製品に付与するためには、企業自らの責任で欧州の規格に適合していることを立証する必要があります。ISOの取得は、その説明の一端を担うこととなり、CEマークを取得する上で非常に有利となります。

実際に「HAL®作業支援用(腰タイプ)」は、2014年11月にISO13482:2014を取得、2015年2月に欧州機械指令に適合し、CEマーキングが可能になりました。