東京オリンピックの喧騒が去った2020年、あなたはどんな生活をしているだろうか?
AIによってシンギュラリティは起きるか? ヒト以上にやさしいAIは登場するか? ヒトとAIはどう共存していくのか?
IT書籍の売上累計が150万部を超える中、2007年に処女小説『エブリ リトル シング』が17万部のベストセラーとなり、中華圏・韓国での翻訳や2回の舞台化(2008年井上和香、2009年内山理名主演)された作家・ITライターの大村あつし氏。
このたび、構想・執筆に2年かけた注目のビジネス青春恋愛小説『マルチナ、永遠のAI。――AIと仮想通貨時代をどう生きるか』が出版されるという。
ビットコイン、ブロックチェーン、ディープラーニング……正確な技術論と、その道の世界的権威の見解をもとに緻密に描いた作品で、SFではない、というから注目だ。
実物通貨と仮想通貨、日常と非日常、ヒトとAIの境界線がどんどんなくなりつつある今、私たちはどうやって生きていけばいいのか?
AIは苦手というあなたも、これさえ覚えておけば、周囲から尊敬の眼差しを浴びるかもしれない。
2000年代中盤から「AI」と「IoT」を研究し続けてきた大村氏の特別寄稿をお送りする。
(構成・寺田庸二)

税理士や弁護士が職を失う
「士業失業」は起きるのか?

『マルチナ、永遠のAI。――AIと仮想通貨時代をどう生きるか』は、次の5文で幕を開けます。


 二度目の東京オリンピックが終わり、世間が浮かれ疲れて喧騒が去った頃、僕はふとトーマス・エジソンの言葉に思いをはせた。
「首から下で稼げるのは一日数ドルだが、首から上を働かせれば無限の富を生み出せる」
 今や、この名言は迷言になりつつある。
「無限の富を生む」ような仕事は人気職業のはずだが、そうした仕事に従事するヒトは減り始めている。一方で、「首から下」の仕事をするヒトは一向に減少していない。


 私は、決して綺麗ごとではなく、どんな職業であれ働くことの尊さに優劣はないと思っています。

 ただ、現実を見ると、私たちの多くが「首から上」の職業に就けるように親から「もっと勉強しろ」と注意され、はたまた、愛する我が子にも同じように注意している人も少なくないのではないでしょうか。

 もっとも、多くの人が感じているとおり、これからは「首から上」の職業は徐々にAIに取って代わられます。たとえるならば、一級建築士の仕事は減っていくのに、大工の数は一向に減らないというイメージです。

 さて、今、たとえで一級建築士を挙げましたが、AIの発達に伴い「士業」は不要になる、いわゆる「士業失業」が話題に上る機会が増えています。
 士業とは、税理、行政書、司法書、社会保険労務、弁護、そして公認会計などのことです。

 まず、人にとっては暗い見通しになりますが、税理士の数は急速に減っていくでしょう。
 税理士は、納税者の代わりに税務書類を作成したり、税務申告を行ったり、また税務に関する相談を独占業務としています。

 こうした業務は、税法や商法などが定める範囲の中で行いますので、そうした法律を学習したAIでもできる仕事であることは容易に想像できるのではないでしょうか。