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ここ数年、人工知能(AI)やロボットが人の仕事を奪うという議論が活発になっています。専門家の中には、7~8割も雇用を奪うと言う人もいるほどです。
割合はともかく、僕も今後20年を見据えると、AI・ロボット化の進展による失業の増加と、都市部への人口流入が深刻な社会問題を招くと考えています。
右の絵をご覧ください。これは「ジン横町」と呼ばれる18世紀半ばに描かれた英ロンドンの風刺画です。労働者たちが粗悪品である当時のジンを飲み、くだを巻いています。中には、赤ん坊にジンを飲ませようとする女性もおり、まるで地獄絵のようです。
当時の英国といえば、産業革命が始まり、近代資本主義経済が芽生え、社会の構造が根本的に変化し始めたころです。仕事を求める農村部の人々が都市部に集中しましたが、職にありつけない労働者も多く街が荒廃していきました。
経済学的に見れば、「摩擦的失業」といえる状況です。社会の構造変化に伴い、ある産業で生じた失業者を他の産業がすぐに吸収できない一次的な状況を指します。慣れた仕事を捨て、新しい仕事に適応するには時間がかかるのです。
今からおよそ100年前、自動車の普及によって馬車が不要となると、馬を世話する人々や馬具を作る人々が相次いで失業しました。馬車産業はなくなり、その労働者は他の産業に移らざるを得なくなったのです。ただ、馬を扱っていた人々が自動車産業に転換できたかというと、それはかなり難しかったのではないかと察します。