「話に説得力がないんです……」
コミュニケーションで悩むすべての人に向けた本連載<「聞くだけ」会話術【実践編】>第4回は、「交渉事が苦手なので、説得力を高めたい!」というむしろ「話し方」にまつわるお悩み。『「聞くだけ」会話術』の著者によると、実はこの悩みを解決するためのポイントも「聞くこと」にあるという。
世間に蔓延する、「トーク偏重主義」「話し方信仰」に潜む大きな「落とし穴」とは?(取材・文/山根洋士)
「話に説得力がなく、交渉事が苦手なんです」
Q 交渉事が苦手です。説得力を高める方法を知りたいです。
(45歳、男性、研修講師・コンサルタント)
人前でしゃべる仕事をしているので、話すことには自信があります。しかし、説得力に欠けるのか、交渉事が自分の思った方向に進みません。
たとえば、企業研修の内容。自分の伝えたいことや得意分野があるので、そこを押していきたいのですが、打ち合わせを進めるうちに、先方の意向にどんどん流されていきます。そして最後には、講師が私でなくてもいいような内容になってしまうことが多々あります。
コンサルティングも同様。私がこうした方がいいと思う提案を、最初はクライアントに聞き入れてもらえます。ところが、回を重ねると、結局最後には私の意見がくつがえされて、クライアントから「やりたいようにやらせてくれ」と言われる始末です。
相手が自分の発言にいちいち納得してくれる。そんな説得力を身につけたいのですが、よい方法はありませんでしょうか?
コミュニケーションに関する悩みは、そもそも根本的な部分での「勘違い」に起因しているケースがほとんど。それを教えてくれたのが、マスターのこの言葉です。
説得力の有無は、お主のしゃべりが上手いか下手かではない。説得したい相手のことを、お主がどれだけ理解しているかにかかっておる。昔から「のれんに腕押し」と言うじゃろ。ヒラヒラしてたいのれんに、シャキッとせいというのは無理な話じゃ。
— 『Shot Bar ラポール』マスター (@rapport_master) 3月 27, 2012
「まずはトークを磨く」ことに潜む落とし穴
説得力を高めようとして、自分のトークを磨くという人は多いかもしれません。ですが一方で、相手を理解しようとする人は、ほとんどいないのではないでしょうか。これこそが、コミュニケーションにおける勘違いの原因、「落とし穴」なのです。もちろん僕も、もれなくこの落とし穴にハマっていました。
そもそも、相手を説得しなければならない「状況」にある時、目の前の相手はどのような「状態」にあるのでしょう。