ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
楠木建 ようするにこういうこと

経営センスの習得に教科書はない
――では、MBAコースの価値はどこにあるのか?

楠木 建 [一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 教授]
【第14回】 2012年5月1日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

既存のMBAプログラムを反面教師にしたICS

 ビジネスには「スキル」と「センス」という2つの能力が必要になる。ところが、この2つは相当に中身が異なるので、区別して考えたほうがよい。担当者のレベルであればそれぞれの専門分野のスキルがあれば仕事はできる。しかし商売丸ごとの経営となるとスキルでは歯が立たない。経営者としてのセンスが必要になる……、ということを、この連載のあちこちでお話ししてきました。

 たとえば連載第7回では、グローバル化という文脈でセンスの大切さを強調しました。グローバル化の本質は単に言語や法律が違う「外国」に出て行くということではありません。

 グローバル化が難しいのは、それが本来的に「非連続性」を伴うからです。それまでのロジックで必ずしも通用しない未知の状況でビジネスをやる、ここにグローバル化の正体があります。

 言語能力やその国の制度についての知識といったスキルも必要ですが、それ以上に未知で不確実な状況で商売丸ごとを動かしていく能力――それは「経営センス」としか言いようがないもの――をもつ経営人材がいるかどうかがカギを握ります。スキルの不足ではなく、センスあふれる経営人材の希少がグローバル化の真の障壁となっているという話です。

 というような話をしていると、ある読者の方から次のような質問をいただきました。「スキルだけでは経営者になれない、センスが大切だ、というのはわかった。でも、ちょっと待て。オマエが仕事にしているビジネススクールのMBA教育は、スキルを教えているだけじゃないのか。MBAで勉強してもセンスは身につかないのではないか。だとすると、ようするにMBAは経営人材の育成には役立たないということになるのではないか」

 これはヒジョーに真っ当な疑問ですので、今回はこの質問に対する僕なりの答えをお話ししたいと思います。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

楠木 建 [一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 教授]

1964年東京生まれ。1992年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年より現職。専攻は競争戦略とイノベーション。2010年5月に発行した『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)は、本格経営書として異例のベストセラーとなり、「ビジネス書大賞2011」の大賞を受賞した。ツイッターアカウントは@kenkusunoki


楠木建 ようするにこういうこと

本格経営書として異例のベストセラー『ストーリーとしての競争戦略』の著者、楠木建一橋大学大学院教授が、日々の出合いや観察からことの本質を見極め、閉塞を打ち破るアイデアを提言。
 

「楠木建 ようするにこういうこと」

⇒バックナンバー一覧