ハイブリッドカーと聞くと、どんな車を思い浮かべるだろうか。きっとガソリンエンジンと電気モーターを併用して走る車をイメージした人が多いはずだ。しかし、日本から見て地球の反対側に位置するブラジルでは、まるで事情が違う。エタノール100%、あるいはガソリンとエタノールを混合した燃料で走れる“ハイブリッドカー”が主流だからだ。

40年前から“脱石油”を開始
「燃料選択の自由」を得たブラジル国民

 サトウキビやトウモロコシを主な原料とする燃料「バイオエタノール」。CO2総量の増減に影響を与えない、半永久的に更新可能な、石油に代わる地球にやさしいエネルギー資源として注目されている。

 そんなバイオエタノールにブラジルが目を向け始めたのは、およそ40年前にさかのぼる。当時のブラジルは、油田を持ちながらも国内需要に追い付くほどの精製能力がなく、石油は輸入に頼る割合が高かった。そんななか起きたのが、1973年の第一次オイルショックだ。

 中東の情勢不安を背景に、輸入する石油価格は高騰。国はこれを非常事態と受け取り、高い石油輸入依存体質からの脱却策として『国家アルコール計画』を開始する。そして、石油に代わる自動車燃料として、国内で豊富に栽培されていたサトウキビ由来のバイオエタノール生産を活発化。エタノールで走る車も同時に開発された。しかしその後、原油価格の安定とともにこの計画は衰退してしまった。

 そんな中、再びエタノールが脚光を浴びる革命的な出来事が2005年に起こる。フォルクスワーゲンが、ガソリンとエタノールをどのような比率で混合しても燃料として使える『フレックス燃料車(FFV)』を発表したのだ。

 エタノールのリッター当たり走行距離はガソリンの約7割。人々はガソリンとエタノールの価格をよく比較し、どちらの方が得かを判断しながら燃料を購入することができる。トヨタやホンダなども生産に乗り出しており、今では新車の85%を占め、国内を走る車の約半数がFFVだという。その割合が今後ますます高まるのは間違いない。

 このように成長を続けるブラジルのバイオエタノール産業で、機を逸することなく事業を拡大する日本企業がある。それが双日だ。