原発関係者が参加していたことで、「やらせ」と大批判を受けた聴取会(正式にはエネルギー・環境の選択肢に関する意見聴取会)。国民的な議論が必要とされ、全国10ヵ所で8月4日まで行われた。
そもそもこの種の聴取会とは、どこまで意味があるのか。一応、国民の意見を聞いていますよというポーズにしか思えないという意見も多い。関係者が参加していようと、いまいと、いずれにしても「やらせ」みたいなものなのではないのかとすら思えてくる。
ゼロシナリオの圧勝に
政府は大あわて
この種の「官製審議会」方式は結論を誘導するようになっているという疑惑がある。政府案では2030年の電力に占める原発の割合について、「0%」「15%」「20~25%」の三つの選択肢を掲げていた。もちろん、2030年ではなく2020年に前倒しや、即時原発停止という意見もあるだろうが、そうした選択肢は作られていない(途中から三つのシナリオ以外の意見も述べることができるようにあったが、選択肢は三つのままだ)。
役所で三つのシナリオを作る場合、真ん中に落とし込みたい意図がしばしばある。ところが、エネルギー問題では、それに反し、両極端であった。10ヵ所の聴取会での意見表明者を集計すると、「0%」1035人、「15%」158人、「20~25%」237人。それぞれの比率は72%、11%、17%と「ゼロシナリオ」が圧倒的に多かった。それにもかかわらず、それぞれのシナリオで同じ人数の意見表明をさせていたのは、「ゼロシナリオ」を不当に扱っていたといわれても仕方ないだろう。
この数字をみたのであろう。あわてて、野田首相は「ゼロシナリオ」の実現に向けた課題を関係閣僚に指示した。2030年とまだ18年先であるので、その時に原発ゼロのシナリオを作るのは難しくない。枝野幸男経産相は、7日、原発依存度を2030年時点でゼロにすることについて「日本経済にマイナス(の影響)と思っていない。やり方を間違えなければ、むしろプラスだ」と述べた。理由として、太陽光など再生可能エネルギー・省エネ設備の導入による内需拡大、技術開発に伴う国際競争力向上を挙げている。