米フォーブス誌(9月10日号)は「100人の最もパワフルな女性」を掲載、ブラジルのジルマ・ルセフ大統領をトップに選んだ。
ブルガリア系移民の中流家庭で育った同氏は、前任のルラ大統領から後継者に指名され、2010年10月の選挙で大統領に当選した。マルクス主義の革命運動家だった1970年代初期に軍事政権下の警察に逮捕され、電気ショックの拷問を受けたこともある。刑務所に3年間入れられ、辛苦で痩せ細ったという。そういった経験を乗り越えてきたが故に、彼女は腰が座っている。
ルセフ氏は今年4月に米ホワイトハウスを訪問した際、オバマ大統領に対して、「先進国の拡張的な金融政策は、新興国の経済を傷つけている」という表現でFRBの金融緩和策を批判した。それがドル安・レアル高をもたらしてきたことに彼女は公然と不満を述べた。
日本ではFRBが追加緩和策を行うと、政治家はそれを所与のものとして「なぜ日銀はもっと緩和策を導入しないのか」という批判を日銀に向ける。しかし、ブラジルの場合は、トップがホワイトハウスに乗り込んで、FRBを激しく非難する。この違いはどこから来るのだろうか?
最大の理由は、米国とブラジルの政治の関係は、米国と日本のそれと根本的に異なっている点にあるだろう。ブラジルは、以前から、中南米における米国に対する「対抗軸」として振る舞ってきた。ブラジルは日本のように米国の安全保障の「傘」の下にはいない。