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日中国交正常化40周年 どう中国と付き合うか

中国は“1930年代の日本”への意識を引きずっている
東京都の購入を防いだ「尖閣国有化」は正しい判断だ
――ジョセフ・ナイ元米国防次官補(現ハーバード大学教授)に聞く

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第5回】 2012年9月28日
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東京都の尖閣諸島買い取り構想などを契機に領有権問題で日中両国の緊張が高まるなか、中国国内では反日行動が全国的に広がっている。こうした日中関係の悪化に対してアメリカは、キャンベル国務次官補が尖閣諸島は日米安全保障条約の適用対象であることを明言しつつも、日中の領有権問題についてはいずれの側にもつかないことを明確にしている。こうした立場を保つアメリカは、今回の日中両国間での領有権問題をどう捉えているのか。また、今後の日中関係については、どのような展開を望んでいるのか。カーター、クリントンら米国の歴代民主党政権で国務次官補や国防次官補などの要職を歴任し、オバマ政権の対アジア外交にいまだ隠然たる影響力を持っているといわれるジョセフ・ナイ氏(現ハーバード大学教授)に聞いた。(聞き手/ジャーナリスト 瀧口範子)

「尖閣諸島国有化」をした
野田政権の判断は正しい

――領有権問題で日中両国間の緊張が高まっている中、日本政府は尖閣諸島を個人地主から買い上げて国有化した。この動きをどう評価するか。

ジョセフ・ナイ(Joseph Nye)
ハーバード大学教授。同大学ケネディスクール前学長。カーター政権で国務次官補、クリントン政権で国防次官補を務めるなど、米民主党政権下で要職を歴任。米国を代表するリベラル派の学者であり、知日派としても知られ る。クリントン政権下の1995年、ナイ・イニシアティブと呼ばれる「東アジア戦略報告」をまとめ、米国が東アジア関与を深めていくなかで対日関係を再評 価するきっかけを与えた。2000年代には、同じく知日派として知られるリチャード・アーミテージ元国務副長官らと超党派で政策提言報告書をまとめ、台頭する中国を取り込むために日米同盟を英米同盟と同じように深化させるべきと説いた。オバマ政権誕生時には一時期、駐日大使の有力候補に浮上。国の競争力に ついて、ハードパワー(軍事力や資源)とソフトパワー(文化的・政治的影響力)を組み合わせた「スマートパワー」の重要性を提唱していることでも有名。 1937年生まれの75歳。

 今、日本にとって重要なのは中国のナショナリズム(国粋主義)を刺激しないことだ。その意味で、日本政府は適切に行動していると考える。中国は年内の政権移行を控えており、この時期には政治指導者間の権力闘争が増して、とかくナショナリズムが高まる傾向がある。自分たちの方がより国家を護っていると、それぞれが誇示しようとするからだ。したがってこの時期は、日本が穏健で抑制がきいた対応をするのが賢明だ。尖閣諸島を購入した野田政権の判断は正しい。そうすることによって、石原慎太郎東京都知事のような人物が中国を激怒させることが防げたからだ。国有化ついて、私は批判的ではない。

――政府が買い上げるのと、東京都が買い上げるのとでは大きな違いがあるということか。

 日本政府が買い上げたことによって、この問題をコントロールするのは政府であることを野田政権はアピールした。国内の一知事が自分の政治目的のために利用するのを阻止したことは正しい。

――しかし、中国を刺激しないという意味で言えば、あのままにしておけなかったのだろうか。

 それについての回答は持ち合わせていない。地主が何を望んでいたのか、あるいは別の地主希望者が出てきたからなのか、そうしたことも不明だ。

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瀧口範子 [ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。


日中国交正常化40周年 どう中国と付き合うか

2012年9月29日は、日中共同声明が出され両国の国交が正常化してらから、満40年を迎える。この間、経済の相互依存度は急速に高まる一方、政治や国民感情は親密・対立を繰り返してきた。人間でいえば、不惑の年を迎えたにもかかわらず、足下では領土問題を巡り、両国の国民感情は悪化している。世界第2位と3位の経済規模を持つ、両国の対立はアジアにとっても、世界にとっても、悪影響を及ぼすことは間違いない。長期的な展望に立ち、両国の関係をどう改善していったらいのか。各界の専門家・識者が、中国とどう付き合うかを提言する。

「日中国交正常化40周年 どう中国と付き合うか」

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