中国は尖閣諸島国有化を単なる
国内的手続きとは捉えていない

かとう・よしかず/1984年、静岡県生まれ。英フィナンシャルタイムズ中国語版、The Nikkei Asian Reviewコラムニスト。2003年、高校卒業後単身で北京大学留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。自身のブログは6600万アクセス、中国版ツイッター「新浪微博」のフォロワー数は158万人以上(2012年9月8日現在)。2010年、中国の発展に貢献した人物に贈られる「時代騎士賞」を受賞。2012年8月、9年間過ごした中国を離れ渡米、ハーバード大学ケネディースクールにてフェローとして赴任。米中関係・中国問題の政策研究に取り組む。

「大変なことになった。対外関係において我が国の核心的利益が直接的に損なわれた。人民は日本が再度侵略してきたと思っている。両国間で適切なコミュニケーションを取り、共に沈静化に向けて動かなければ、中国社会の日本に対する対抗措置は全面化していくだけだ――」

 中国共産党内で対外関係を管轄する幹部は、私にこう打ち明けた。

 日本の野田政権による尖閣諸島の国有化は、野田佳彦首相も含め、日本国民からすれば「所有者が変わるだけ」の国内的手続きとクールに認識できるだろうが、中国側、特に尖閣諸島をめぐる実情を知らされていない中国人民からすれば「侵略」と映り、政府は近年メディアを賑わしている「核心的利益」を侵されたと認識する。

「我が国の核心的利益をここまで赤裸々に侵犯してくるのも、極めてレアなケースだ。だからこそ、政府は批判を強める一方だし、人民は怒り狂ったように暴走する」

 中国共産党内で社会安定を管轄するもう一人の幹部が私にこう言った。

 読者の皆さんは、この共産党上層部のコメントをどう受け止めるだろうか。

 日本政府・国民からすれば、事の経緯はどうであれ、あれだけすさまじい、一部が暴徒化した反日デモ、とりわけ、30年以上前から始まった改革開放以来、中国社会の発展に貢献してきた日本企業の工場が立て続けに破壊されたり、日本大使館、日本食レストラン、日本法人への暴力的違法行為を映像や報道を通じて目にしたりすれば、「中国はやっぱり普通の国家じゃなかった。これからまともに付き合っていけるのだろうか」と不安になり、同時に恐怖感すら抱くだろう。

 日本政府による尖閣諸島国有化、中国国内で勃発した反日の嵐、中国政府の対抗措置、日中民間交流への多大なる影響、中国監視船の挑発的な動きなど、一連の「いま起きていること」を3つのポイントから整理してみたい。