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上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

5年前の首相辞任理由はねじれ国会での困窮
“チーム安倍”の問題点と「本当の課題」

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第45回】 2012年10月10日
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 自民党新総裁に安倍晋三元首相が選出された。安倍氏は、5年前に首相を突然辞任したことを陳謝した上で、「自らの経験、責任をしっかりと胸にきざみ政権奪還に向け、皆様とともに全力を尽くす」と述べた。

 首相在任時、安倍氏が掲げた施策の1つに、失敗した人が何度でも挑戦できる「再チャレンジ可能な社会の実現」があった。首相経験者が自民党総裁に返り咲き、首相の座に再び挑戦することは、自民党結党以来、初めてのことだ。政界が「再チャレンジ可能な社会」になるのは、基本的に歓迎すべきことだ。

 だが、再チャレンジ可能な社会は「フェアな競争」が大前提だ。安倍氏が挫折を経て、政治家として成長したと認められた再チャレンジなら問題ない。だが、単に岸信介元首相(祖父)、安倍晋太郎元外相(父)が出た名門一族出身ゆえの再登場というならば、政界は優秀な人材に門戸が開かれない、閉鎖された社会に逆戻りしたということかもしれない。

 安倍氏の新総裁就任に際して、1つ気になることがある。それは、安倍氏が5年前の首相辞任について「当時は病気で政権を離れるしかなかったが、2年前に新薬が開発されすっかり良くなりました」と説明していることだ。この発言には、安倍氏とその取り巻き「チーム安倍」の悪しき体質が表れているように思われる。

安倍首相辞任の理由:
健康問題ではなく「ねじれ国会」に窮したため

 安倍氏が首相を辞任した理由は、厳密には健康問題ではなかった。首相辞任記者会見での安倍氏の発言は次の通りである。

 『本日、小沢党首に党首会談を申し入れ、私の率直な思いと考えを伝えようと、残念ながら党首会談については、実質的に断られてしまったわけであります。先般、小沢代表は民意を受けていないと、このような批判もしたわけでございますが、大変残念でございました。 今後、このテロとの闘いを継続させる上において、私はどうすべきか。むしろこれは局面を転換しなければならない。新たな総理の下でテロとの闘いを継続していく、それを目指すべきではないだろうか』(首相官邸ホームページを参照のこと)。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


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国際関係、国内政治で起きているさまざまな出来事を、通説に捉われず批判的思考を持ち、人間の合理的行動や、その背景の歴史、文化、構造、慣習などさまざまな枠組を使い分析する。

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