24時間365日
首都高を支える「走る安全管理」
首都高速道路(以下、首都高)を走行していると、黄色いパトロールカーを目にする機会は多い。見慣れた存在ではあるが、その役割を詳しく知る人は意外と少ないのではないだろうか。
東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県を結び、総延長約327.2kmに及ぶ首都高。1日平均約100万台の車両が行き交うこの巨大インフラを、24時間365日見守っているのが、首都高パトロール隊だ。
「私たちの仕事は、道路の異常をいち早く発見し、事故や渋滞につながる芽を摘むことです」
そう語るのは、首都高速道路 保全・交通部 防災・交通管理室 交通管理課の佐藤晃朗(てるお)課長。自身も現場経験を持つ。
首都高の安全を支えるパトロール隊。無線で交通管制室と連携し、落下物や事故への初動対応を行う
パトロール隊の主な業務は、落下物の回収、事故処理、故障車対応、道路設備の異常確認など多岐にわたる。交通管制室と常に連携し、異常が確認されれば、最も近いパトロールカーが即座に現場へ向かう。
600人・5交代制で支える
緊張感の連続
この巡回体制を支えているのは、約600人のパトロール隊員だ。首都高は東京西局、東京東局、神奈川局の3局に分かれて管理され、各基地から隊員が出動する。
日中は35台のパトロールカーが午前と午後に1回ずつ巡回し、夜間は夕方・深夜・早朝の3回、合計1日5回の定期パトロールを欠かさない。この「常に走っている」状態が、迅速な初動対応を可能にしている。
また、震度4以上の地震が発生した場合には、通常巡回とは別に「特別パトロール」を実施。道路本線上の構造物のひび割れや落下物の有無を目視で確認し、異常があれば即座に通行規制や補修につなげる。
「夜間や休日は人員が少なくなりますが、宿日直制度により、いつでも対応できる体制を整えています」と佐藤課長は話す。
隊員たちの安全意識は、勤務時間外にも及ぶ。プライベートで車を運転していても、無意識に路面や構造物に目がいくという。落下物を見つければ、照明ポール番号で位置を確認し、安全な場所から道路緊急ダイヤル(#9910)に通報することもある。
「見過ごして事故につながる方が怖い」。その言葉に、プロとしての責任感がにじむ。
佐藤課長は、プライベートで車を運転していても、無意識に路面や構造物に目がいくという
「秒」を争う落下物回収と
二次災害防止
パトロール業務の中でも、特に多いのが落下物対応だ。脚立や木材、家具、スペアタイヤ、鉄くずなど、内容はさまざまだ。
「落下物は通行車両にはじかれて路肩に寄ることが多いのですが、路肩に寄っていても、二輪車が踏めば大事故につながります。発炎筒で後方の安全を確保し、できるだけ早く回収することが基本です」と佐藤課長は語る。
時代と共に落下物の種類も変化してきた。昭和の頃には、活魚運搬車からタイやヒラメが落ちていたこともあったというが、現在は引っ越し荷物や車両部品が目立つ。
事故現場で最も重視するのは、二次災害の防止だ。夜間、高速道路上で車外に立つことは極めて危険であり、パトロール隊は一刻も早く現場に到着し、安全な環境を確保する。
「『私たちが守るから大丈夫ですよ』と声を掛けることも大切な仕事です」(佐藤課長)
パトロール隊では、故障車は28分以内、事故全般は48分以内という処理目標時間を設定している。常時巡回しているからこそ、最短距離で現場に向かうことができる。
なぜ「走らなければ」守れないのか
首都高がここまで巡回に力を入れるのには理由がある。全線の約95%が高架橋やトンネルで構成され、これは世界的にもまれな構造物だ。さらに大型車の交通量は一般道路の約5倍に達し、構造物には常に大きな負荷と振動がかかっている。
こうした環境では、定期点検だけでなく、日常的に走行しながら路面の微細な違和感を察知することが欠かせない。「走る」こと自体が、重要な点検手法なのである。
定期点検に加えて、日々のパトロールによる走行で、路面の微細な変化や違和感を察知し続けるパトロール隊
近年は、技術の力も活用されている。点検・補修データを一元管理するスマートインフラマネジメントシステム「i-DREAMs®」を導入し、パトロールカーには車載カメラを搭載。映像と位置情報をリアルタイムで共有することで、異常の早期発見につなげている。
ドローン点検も2021年度より河川部などの点検困難箇所において導入しており、将来的にはAI解析やデジタルツインによる予防保全の高度化を目指している。
日々の利用が支える首都高の安全
首都高は、日々多くの人々の利用によって支えられている。一人一人の利用が、パトロールや老朽化対策といった安全確保の取り組みを支え、首都高の維持につながっている。
利用者サイドができることとして、「車両点検や制限速度の順守、車間距離の確保は、事故防止だけでなく、道路の寿命を延ばすことにもつながります」と佐藤課長は強調する。
コロナ禍においても、首都高は物流を止めることなく運営を続けてきた。その背景にあるのは、「当たり前の日常を止めない」という揺るぎない使命感だ。
「100年先を見据え、グループ一丸となってよりよい社会づくりに貢献してまいります」と語る佐藤課長。写真のベンチは高速都心環状線「銀座入口」の案内標識をリサイクルしたもの
今日も黄色いパトロールカーは首都高を走り続ける。その一周一周が、都市の機能と人々の生活を確かに支えている。
「あなたが進む。首都高が進む。」と題したキャンペーンを実施拡大画像表示
今、首都高では「あなたが進む。首都高が進む。」と題したキャンペーンを実施中。サイトには、首都高利用者のさまざまな視点から首都高が物語形式で描かれたストーリーと動画を掲載。あなたにとって、“身近な首都高”をぜひ感じてほしい。
