HOME

メタボリック

肝臓

腰痛・肩こり

高血圧・高脂欠症

うつ・ストレス

ニオイ

薄毛

老化防止

禁煙

男の病気

「引きこもり」するオトナたち

将来への危機感がありつつも働かない
「引きこもり」はやる気がないだけ?

池上正樹 [ジャーナリスト]
【第6回】

 一旦、社会を離脱すると、なかなかリスタートラインに立てない壁がある。

 40代のサイトウさん(仮名)は、2年ほど前、契約社員として勤めていた都心の印刷会社を突然辞めた。以来、都内の昔ながらの賑やかな住宅街で、両親とともに住んでいて、現在も仕事をしていない。

職場環境が良くとも
「何となく」会社を辞める大人たち

 元々、社内の従業員の紹介で入った会社だった。しかし、その紹介者は少し前に辞めていった。時々、一緒にお茶を飲んだりしたという女子社員も退職した。

 主に教材の印刷を任されていた。製本から配送手配まで、忙しいときには休日もなく、1日、ほとんどフルに働いた。給料の中から、実家に間借りする身として、親にも毎月、食費を支払っていた。

職場内は、人間関係も悪くなく、居心地のいい会社だったという。でも、自分のやりたいこととはまったく違っていた。

 「このままでいいのかな」
と、心のどこかで、いつも少し疑問を抱きながら働いていた。

 正社員になれるチャンスは、いくらでもあったようだ。ただ、自ら「この会社の社員として勤めていきたい」という目標がなかったことと、若い社員が多くいる職場で「いまさら…」という気持ちもあった。

 会社を辞めようと思ったきっかけも、
「何となく、会社に使われている虚しさとか、疲れも少しあった。時間が欲しかった」
と、サイトウさんは振り返る。

 「たとえれば、ずっと孤独でした。カゴの中で、黙々と仕事してきて、乾いた感じというのかな。モヤモヤ感がありました。苦痛というほどではないけど、歯車になりかかっている自分がすごくイヤだったんですね」

 サイトウさんが、口頭で辞職の意思を伝えると、上司は当然ごとく驚いたという。慰留もされた。

 その上司も、サイトウさんより2歳ほど年下だった。すでに結婚し、子供が2人いて、しっかり家庭を持っている。

 「それなのに、実家で両親と暮らす自分自身と、つい比べちゃったりするんですよ。そんな引っかかりも、多少あったのかもしれません」

 この間、製本の糊、トナーなどをずっと吸い続けてきて、肺などの健康に悪い影響を与えるのではないかという漠然とした不安もあった。

1 2 3 4 >>
このページの上へ

池上正樹 [ジャーナリスト]

通信社などの勤務を経て、フリーのジャーナリストに。主に「心」や「街」を追いかける。1997年から日本の「ひきこもり」界隈を取材。東日本大震災直後、被災地に入り、ひきこもる人たちがどう行動したのかを調査。著書は『ひきこもる女性たち』(ベスト新書)、『大人のひきこもり』(講談社現代新書)、『下流中年』(SB新書/共著)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)など多数。TVやラジオにも多数出演。厚労省の全国KHJ家族会事業委員、東京都町田市「ひきこもり」ネットワーク専門部会委員なども務める。YAHOO!ニュース個人オーサー『僕の細道』

 


「引きこもり」するオトナたち

「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

「「引きこもり」するオトナたち」

⇒バックナンバー一覧