そんな勢力図に地殻変動が起ころうとしている。“新参者”が台頭してきたのだ。

 大企業の役員がそれだ。最近は役員報酬の急激な伸びによって、期せずして富裕層の仲間入りを果たした大企業の役員が激増しているというのである。

「経済財政白書」によると、資本金10億円以上の大企業製造業の役員報酬の平均は、約1500万円だった01年度からわずか4年で2倍の約3000万円まで跳ね上がった。従業員1人当たりの平均給与は約600万円からほとんど変わっていないにもかかわらずだ。

 富裕層の実態に詳しい甲南大学の森剛志准教授は「その後も役員報酬の上昇傾向は続き、現在は平均で5000万円を突破し、さらにその数を増やしている」と解説する。

 実際、たった1年で1億円以上の役員報酬を得ている役員だけで約360人もおり、数千万円クラスの報酬となれば、その比ではないくらい人数は膨れ上がる。 

ボストンコンサルテイングが主張
「日本は富裕層大国」という誤解

 一方で、「日本が富裕層大国というのは大いなる誤解」との主張がにわかに浮上している。

 確かに、ボストンコンサルティンググループがこのほどまとめた「グローバル・ウェルス・レポート」を読み解いていくと、まったく異なる日本の富裕層事情が浮かび上がってくるのだ。

 1億ドル(約80億円)以上の金融資産を保有する超富裕層のランキングで、日本は15位にすら入っていないのだ。外資系金融幹部は「日本の富裕層は金融資産の単位が海外と比べて1桁小さく、小粒な資産家ばかり」と皮肉る。実際、日本国内で超富裕層といわれる富豪は、どんなに多く見積もっても200世帯程度しか存在しない計算となるという。

 金融資産100万ドル以上の富裕層でも、人数こそ多いが割合でいうと、上位トップ10にランク入りしていない。上位の多くは人口が少ない資源国が占めるとはいえ、米国や台湾がトップ10に入っていることを考えると、富裕層大国というイメージは勘違いと言われても仕方あるまい。

 そもそも、日本人富裕層の人口が182万人と推定した「ワールド・ウェルス・レポート」の分析についても、為替が反映されただけという側面がある。というのも、同レポートは、金融資産が100万ドル以上を富裕層と定義しているが、円高なので日本円では約8000万円程度にすぎない。「60代以上で金融資産8000万円は富裕層とはいえない」と税理士法人幹部は定義自体に疑問を呈する。