『ストレスフリー超大全』の著者で精神科医の樺沢紫苑さんは、借金玉さんの著書『発達障害サバイバルガイド』について、「このリアリティ、具体性は当事者の経験あってのもの。精神科医や研究者には、絶対に書けません」と絶賛しています。
今回はYouTubeで実現した2人の対談「発達障害サバイバルライブ!(動画)」の内容を抜粋・編集してお届けします。(撮影/疋田千里)
(視聴者の質問)
「同僚が発達障害を持っています。どうやら会社には内緒にしているようで、空気を読めない発言や態度でお客様からクレームが入り困っています。対処法があれば教えてください」(36歳・女性)
対処しないという選択肢も持つ
(二人の回答)
樺沢紫苑(以下、樺沢)「発達障害の人にどう向き合うべきか」は、よく受ける質問です。まず大前提として、発達障害は、本人が症状を自覚し、行動を変えない限りよくなることはありません。日本人は優しい人が多く、善意ベースで「何かをしてあげたい」と行動をとりますが、相手とのコミュニケーションに齟齬がある場合は、善意がストレスに転換する可能性をはらんでいます。残念に思う人もいるかもしれませんが、その人を変えることができるのはその人自身のみであって、他人には不可能なのです。
その上で、「発達障害にはどういう特徴があるのか」を理解していくことで、病状と行動に対する予測ができ、ある程度余裕をもって対応することができるようになると思います。
私の患者さんの中にも突然切れて暴れだす人はいるけれど、「あー、今こういう症状でこうした行動に出ているんだ」と、基本的に受け流し、静観するというスタンスでやっています。医師がとかく冷静に見えるのは、人間性が冷淡なのではなく(笑)、相手の症状を知ったうえで対応しているからなんですよ。
精神科医、作家
1965年、札幌生まれ。1991年、札幌医科大学医学部卒。2004年からシカゴのイリノイ大学に3年間留学。帰国後、樺沢心理学研究所を設立。「情報発信を通してメンタル疾患、自殺を予防する」をビジョンとし、YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで累計50万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動している。最新刊は『精神科医が教える ストレスフリー超大全』(ダイヤモンド社)。シリーズ70万部の大ベストセラーとなった著書『学びを結果に変えるアウトプット大全』『学び効率が最大化するインプット大全』(サンクチュアリ出版)をはじめ、16万部『読んだら忘れない読書術』(サンマーク出版)、10万部『神・時間術』(大和書房)など、30冊以上の著書がある。
YouTube「精神科医・樺沢紫苑の樺チャンネル」
借金玉 そうですね。まず問題のありかを言語化する必要があります。発言のどこに問題があって、どう改善すべきなのかを当人はわかっていないわけですから、それを言葉にして教えるほかありません。例えばですが、もしお客さんにタメ口をきいているとするなら、「それはダメだよ」と、はっきり言ってあげるべきです。そして、問題を言語化するときに「発達障害」という言葉を用いる必要は必ずしもないでしょう。
それでも相手との関係がストレスになるのなら、距離をとる、逃げるということも大事だと思います。
人と人との関係性は、自分が「付き合っていこう」と認めてはじめて成立・持続するものです。義務的に付き合う必要なんてありません。家族はもちろん、職場の上司、部下、同僚の場合も同様です。職場のダメな同僚は、あくまで職場のダメな同僚で良いのです。
発達障害とストレスのどちらが体に悪いかと言えば、これはもう圧倒的に後者です。さらに言えば、発達障害はなくなりませんが、ストレスはなくせます。守るべきは、自分の健康と命。発達障害当事者と健常者の双方にとって、割り切った人間関係は大事だと思います。
1985年、北海道生まれ。ADHD(注意欠如・多動症)と診断されコンサータを服用して暮らす発達障害者。二次障害に双極性障害。幼少期から社会適応がまるでできず、小学校、中学校と不登校をくりかえし、高校は落第寸前で卒業。極貧シェアハウス生活を経て、早稲田大学に入学。卒業後、大手金融機関に就職するが、何ひとつ仕事ができず2年で退職。その後、かき集めた出資金を元手に一発逆転を狙って飲食業界で起業、貿易事業等に進出し経営を多角化。一時は従業員が10人ほどまで拡大し波に乗るも、いろいろなつらいことがあって事業破綻。2000万円の借金を抱える。飛び降りるためのビルを探すなどの日々を送ったが、1年かけて「うつの底」からはい出し、非正規雇用の不動産営業マンとして働き始める。現在は、不動産営業とライター・作家業をかけ持ちする。最新刊は『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』。