『ストレスフリー超大全』の著者で精神科医の樺沢紫苑さんは、借金玉さんの著書『発達障害サバイバルガイド』について、「このリアリティ、具体性は当事者の経験あってのもの。精神科医や研究者には、絶対に書けません」と絶賛しています。
今回はYouTubeで実現した2人の対談「発達障害サバイバルライブ!(動画)」の内容を抜粋・編集してお届けします。(撮影/疋田千里)
(視聴者の質問)
「自分は発達障害者です。普通が苦痛である一方で、世間からは普通であることを求められているように感じます。10年前からメンタルクリニックに通院するようになったことをきっかけに、自分なりの普通を探しています。何かご意見をください」(38歳・男性)
「普通の人」は数%しかいない!?
(二人の回答)
借金玉「自分なりの普通」、難しいですね……。簡単には答えられない。
樺沢紫苑(以下、樺沢) 私は「今のままでいいのでは?」と言ってあげたいですね。
普通がいい、いわゆる「普通信仰」は、日本人の典型的な発想であって、それに由来する同調圧力が時に人を苦しめてしまうのは、コロナ禍で多くの人が実感したのではないでしょうか。
周囲の要求に、表面的には合わせてもいいけれど、心の中では背を向けてしまいましょう。発達障害やメンタル疾患というハンデキャップを持っている人が、ヨーイ、ドン!で、みんなと同じように走るというのはそもそも難しい話です。普通を目指すというのは、それくらい大変なことで、だからこそ質問してくれているのだと思うけれど、だったら周囲を物差しとするのではなく、自分で自分の普通を決めるくらいの感覚でいいのではないかと思います。
『ストレスフリー超大全』では、他人じゃなくて自分と比べようと書きました。1年前、半年前、3ヵ月前の自分と比べたら、変化や成長を実感しやすいのではないでしょうか。人と比べるのではなく、自分と比べる。自分をライバルとするのです。そうすることで、周囲が求める普通にとらわれることなく、少しは楽に生きられるはずです。
精神科医、作家
1965年、札幌生まれ。1991年、札幌医科大学医学部卒。2004年からシカゴのイリノイ大学に3年間留学。帰国後、樺沢心理学研究所を設立。「情報発信を通してメンタル疾患、自殺を予防する」をビジョンとし、YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで累計50万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動している。最新刊は『精神科医が教える ストレスフリー超大全』(ダイヤモンド社)。シリーズ70万部の大ベストセラーとなった著書『学びを結果に変えるアウトプット大全』『学び効率が最大化するインプット大全』(サンクチュアリ出版)をはじめ、16万部『読んだら忘れない読書術』(サンマーク出版)、10万部『神・時間術』(大和書房)など、30冊以上の著書がある。
YouTube「精神科医・樺沢紫苑の樺チャンネル」
借金玉「普通」って、実は「完璧超人」を指すことが多くて。婚活市場では「身長175cm以上、年収500万円以上、非喫煙者……」とさまざまな条件がついた男性が普通とされるけれども、実際には人口数パーセント程度しかいないという話もあります。普通って、それくらいあいまいで根拠のないものだったりする。だったら気にしないというのも手ですよね。自分にとって大切なものが何なのかがまず重要ですよ。
樺沢「普通じゃなくてもいいんじゃない?」と考える人が増えれば、日本も面白くなると思いますけどね。私の生き方のコツは、「みんなと同じ」をしないこと。みんなが同じことをし始めれば、それはやめて、みんながやっていないことをやる。それでやってきました。
1985年、北海道生まれ。ADHD(注意欠如・多動症)と診断されコンサータを服用して暮らす発達障害者。二次障害に双極性障害。幼少期から社会適応がまるでできず、小学校、中学校と不登校をくりかえし、高校は落第寸前で卒業。極貧シェアハウス生活を経て、早稲田大学に入学。卒業後、大手金融機関に就職するが、何ひとつ仕事ができず2年で退職。その後、かき集めた出資金を元手に一発逆転を狙って飲食業界で起業、貿易事業等に進出し経営を多角化。一時は従業員が10人ほどまで拡大し波に乗るも、いろいろなつらいことがあって事業破綻。2000万円の借金を抱える。飛び降りるためのビルを探すなどの日々を送ったが、1年かけて「うつの底」からはい出し、非正規雇用の不動産営業マンとして働き始める。現在は、不動産営業とライター・作家業をかけ持ちする。最新刊は『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』。