およそ1ヵ月前の10月末、アメリカで数々のウェブサイトがダウンした。

 ダウンしたのは、映画レンタルのネットフリックス(Netflix)、店に「チェックイン」したことを友達に知らせるフォースクウェア(Foursquare)、世間の話題がすぐにわかるレディット(Reddit)、人気雑誌のファストカンパニー(Fast Company)、新しいタブレット・メディアを目指すフリップボード(Flipboard)、スタンフォード大学からスタートしたオンライン教育のコーセラ(Coursera)などである。

 ダウンの理由は、アマゾンのウェブサービス(AWS)の不具合だ。サーバー間の接続がうまくいかず、特定の地域をカバーするデータセンターの機能がダウンした。それによって、上記のような企業のサイトに支障が生じたのである。アマゾンは、今後同様の問題は起きないよう処置を施したと、後に発表している。

 驚いたのは、こんなにたくさんの著名企業がAWSを利用していたのかということだ。

グーグルやマイクロソフトとも違う
アマゾンの「素な」クラウドサービスとは

 AWSは、アマゾンが提供するクラウドサービスである。クラウドコンピューティングは、周知の通りインターネットを経由してコンピュータ処理能力やデータストレージなどのサービスを利用することである。自社で大掛かりなサーバーなどのインフラを構えることなしに、いわば出来合いのインフラを貸してもらうという格好だ。

 企業は、クラウドサービスを利用することによって、多額のIT初期投資を免れる上、設備の建設を待たずしてすぐにウェブサイトやサービスを立ち上げることができる。また、メンテナンスのための人員もカットでき、システムのアップデートの心配も不要になる。

 クラウドサービスを提供する企業はアマゾン以外にもグーグルやマイクロソフトなどがあるが、利用者の話によるとアマゾンのサービスは最も「素な」タイプなのだという。要は、あまり作り込みがされていない分、いかようにも利用でき、企業側のエンジニアにとって応用が効くのだそうだ。