ワシントン、ニューヨークと出張で回っているところだが、今回は当局者や市場関係者とのアポがとても取りやすかった。「アベノミクス」への関心が高いからである。しかも、米国滞在中に黒田東彦氏が次期日銀総裁に指名されるとの報道が相次いだため、金融政策に関する質問も多数受けた。
ただし、日本に対して強い興味を抱いているのは金融関係者であって、一般の人はそうでもない。象徴的なのは2月23日の新聞である。安倍首相訪米の記事は、「ワシントンポスト」は9面、「ニューヨークタイムズ」は7面だった。
現地の市場関係者は、概ね日本がデフレ脱却への意思を示していることを評価している。しかし、ある有力FRBウオッチャーは「新総裁は2%のインフレを達成できるのか?」との疑念を呈していた。賃金が毎年数%ずつ増加していかなければ持続的な2%インフレは実現困難だからである。
各国のインフレと賃金を比較するとそれがわかる。以下の数値は、前者が1992年から2011年までの20年弱の平均インフレ率、後ろのカッコ内が同期間の平均名目賃金上昇率だ。オーストラリアは+2.6%(+3.8%)、米国は+2.5%(+3.4%)、英国は+2.2%(+3.7%)、ドイツは+1.8%(+2.4%)、そして日本は+0.1%(▲0.2%)となっている。