オープンなスマートホームサービス

三菱地所が開発した「HOMETACT(ホームタクト)」は、スマートフォンアプリの操作やスマートスピーカーによる音声操作で、集合住宅のエントランス解錠、玄関ドアの施錠・解錠、室内の照明・エアコンなどの遠隔操作から、ロボット掃除機に掃除を命じることまでできる総合スマートホームサービスだ。

不動産周辺領域をDX化し顧客満足向上と収益を両立 新たな街づくりに挑む<br />三菱地所
住宅業務企画部
新事業・DXユニット統括
橘 嘉宏

本来、再開発やビル賃貸のようなアセット事業を行う同社が、なぜスマートホームサービスのようなノンアセット事業に力を入れるのか。住宅業務企画部新事業・DXユニット統括の橘嘉宏氏は、「既存事業の成長には限界があり、新たな収益の柱となるような新事業創出に注力している」という。

同社の「長期経営計画2030」では、ノンアセット事業を成長領域と位置付け、500億円規模の利益上乗せを目指している。そのため、「HOMETACT」に代表される新たなデジタルサービスによるフィービジネスの獲得は、「会社全体の重要なテーマの一つになっている」のだと橘氏は言う。

「社内ではスマートホームをネクスト住設(住宅設備)と呼び、今後の住宅事業において、必ず取り組まなければいけないテーマと認識しています」

注目すべきは、同社が企画段階から、外販を視野に入れたプラットフォームサービス構想を目指していたことだ。背景には、「閉鎖的な日本のスマートホーム市場への危機感がある」と橘氏は言う。

「アメリカ、中国、東南アジア諸国では、すでにスマートホームの普及が進んでいます。ところが日本はスマートロックすら一般的ではない。日本の住空間の進化はここ20年ほど止まっており、新たなプレイヤーが連携を呼びかける必要性を感じていました」

そのため、「HOMETACT」は、各メーカークラウドとのAPI連携や日本独自の通信規格「ECHONET Lite(エコーネットライト)」を組み込んだハイブリッド型オープンプラットフォームにして、特定のブランドやメーカーに依存しないことにこだわる。その方が居住者や、それを採用する不動産事業者に多くのメリットを提供できるからだ。

サービス利用開始時の煩わしい初期設定作業は不要。ログインだけでスマートホーム機器が使え、居住者が持ち込んだWi-Fiオーディオスピーカー、ロボット掃除機、スマート照明などとも連携させることができる。すでに三菱地所レジデンスの賃貸マンション「ザ・パークハビオ」シリーズなどに導入を進めるだけでなく、分譲マンションへの導入検討と並行して、デベロッパーや賃貸管理会社、インフラ企業へのサービス提供を進めている。