多くの人が『人との対話』に苦手意識を抱いている。できればすべてメールですませたいという人すら。残念ながら「人と話すこと」をゼロにはできない。仕事となればなおさら。いったいどうやって克服すればよいのだろう。
答えは実はシンプル、あなたの発するひと言を変えるだけだ。周囲を緊張させたり、気持ちを萎えさせたりするNGな言葉から、その場の空気をあたたかくするひと言、自然な会話を生む言葉へと切り替えてみよう。
そこでいま話題を呼んでいるのが、3万人に「人と話すとき」の対話術を指導してきた人気ファシリテーション塾塾長の中島崇学氏の著書『一流ファシリテーターの 空気を変えるすごいひと言――打ち合わせ、会議、面談、勉強会、雑談でも使える43のフレーズ』だ。
今回は、同書から特別に抜粋。誰かが良い話をしてくれたとき、そのほめ方に注意したほうがいいという話を紹介する。
「素晴らしい」とほめるのはおススメできない
発した瞬間にみんなをうならせる鋭い意見というのは、めったにありません。
発言者も自分の考えがどう受け取られるかはっきりわからないまま、不安な気持ちで話してくれています。
発言する人の心は非常に繊細です。だからこそ、「いいことを言ってくれてありがとう」と、どんな意見でも認めるわけです。
その意見が本当に良いものだったら、そこでとめてしまうのはもったいない!
×「小林さんのご意見は素晴らしいです」
「素晴らしい」という言葉を私はあまり使いません。なぜなら、とても安易な印象を受けるからです。上から目線で評価された気にもなります。安易に上から目線で評価されて喜ぶ人はまずいません。
このように認めたら、ほかの人も置いてきぼりになってしまいます。
全体の空気に気を配るのがポイント
いちばん大切なことは、全体の雰囲気を良くすることです。
その意味で小林さんは、会議に大きく貢献しています。彼が意見を言ってくれたおかげで、みんな発言しやすくなっているのですから。せっかくの良い意見は、会議の場全体に広げていきましょう。
○「小林さんのご意見は、私たちが知りたかったことですね」
意見を述べたのは小林さんですが、彼は「私たちの代表」であると位置付けて、意見を全員で共有するのです。小林さんの意見にうなずいている人が多い、集中しているようだ……そんな手応えを感じたら、すかさず「私たちが聞きたいことを言ってくれました」と共有しましょう。
「これは私たちにとっていい意見ですよ。私たちの代表が言ってくれた、私たちの意見ですよ」と。
良くない意見だったとしても
さて、小林さんの意見は「なかなかいいけれど、そこまで良くもない」ということもあります。現実には、このケースがほとんどでしょう。その場合は、違う広げ方をします。
○「今のご意見で、私たちの議論が発展していきますね」
小林さんの意見をベースに議論を展開して、「私たちの意見」を育てていこうというもっていき方です。
「この話から、私たちは大きな可能性を見いだせる気がします」
一人の良い意見を、みんなの意見に転換する
お気づきだと思いますが、この場合は「小林さん」という呼び方ではなく、「私たち」と言っています。なぜなら、すでにみんなの意見になっているからです。前に出た話とつなげたり、次のテーマにつなげたりして、ほかの人にも意見を出してもらえるように促します。
小林さんについては意見を述べた時点でしっかり認めているので、小さな信頼関係ができています。いつまでも「小林さん」と名前を出し続けたら、いつまでも1人の手柄になってしまい、みんなにまで広がりません。
小林さんはもう放っておいても大丈夫。「自分の意見がきっかけになって、みんなの議論が広がっていく」あるいは「みんなの意見になった」というのは、むしろ本人にとっても喜ばしいことです。