第2回:日本の鉄鋼業はカーボンニュートラル社会実現に向けて、英知を集めた「水素製鉄技術」で世界をリードするGREINS
野村誠治 プロジェクトリーダー
(日本製鉄 技術開発本部 フェロー)

鉄鋼各社が共同で取り組んだ「COURSE50」

鉄鋼業のCO2排出量は、日本全体の排出量の13~15%を占めるといわれる。温暖化対策の観点から各社とも省エネ設備の導入、環境対策の技術開発については連携して進めてきた。その代表例が、各社がNEDOの委託事業として共同で取り組んだ国家プロジェクト「COURSE50」だ。CO2削減に有効な世界初の水素還元製鉄の技術を目標として、2008年に技術開発がスタート。16年、ついに「COURSE50」試験高炉(実機の400分の1の大きさ)を使い、水素系ガス吹き込みによる還元工程でCO2排出量の10%以上削減が可能であることを世界で初めて示した。だがそれでも90%は残る。そこでCO2を分離・回収する技術(化学吸収法および物理吸着法)の開発に併せて取り組んだ。ところが20年に大きな転機が訪れる。

次ページからは、日本に訪れた大きな転機と、そこから加速したカーボンニュートラルへの取り組みを紹介する。日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所、金属系材料研究開発センター(JRCM)の4社によるコンソーシアムが挑む、前人未到の技術領域とは?