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山田厚史の「世界かわら版」

キプロスは他人事ではない
キーワードは国債、銀行は火薬庫

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第32回】 2013年3月28日
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 海の泡から生まれた美神アフロディーテ(ビーナス)神話の発祥の地はキプロスである。文明の源流にひたる地中海の島がユーロ体制を動揺させている。銀行封鎖・預金課税という新手の荒療治が始まった。国家の債務危機という「EUの病」は、金融危機と表裏一体で、ある日突然、預金が国家に奪われる、という事態が日常に起こることを示した。

キプロス危機は他人事か

 日本から見たキプロス危機は、他人事である。

 「EUは大変だ」「ユーロ体制は保ちますかね」そんな反応がほとんどだ。

 そうだろうか? 私には、このほど発足した日銀の黒田東彦総裁が抱える課題とキプロスは二重写しに見える。

 キーワードは国債。銀行は火薬庫、ということだ。

 もちろん日本は、キプロスのように外国の資金に頼る経済ではない。産業の厚みも経済規模も比べものにならない。だが、国家債務と金融不安が隣り合わせになっている経済の構造は変わりない。

 「日本がキプロスみたいになるわけはないじゃないか」

 ほとんどの人は、そう思っているだろう。平時では、皆そう考える。原発がそうだったように、身近に危険がありながら、変わらぬ日常がつづいている限り、人々はまさかの事態は考えない。

 キプロスもそうだった。20世紀末に金融国家を針路としたキプロスの人々は「ギリシャ危機さえなければ、こんな悲劇に見舞われることもなかったのに」と嘆いているだろう。

 事の起こりはギリシャにあったが、キプロスにも問題があった。銀行がカネを貸して企業を育て、共に成長する、という本来の業務から逸脱したことである。集めたカネで国債を買いまくり、金利の低下で大もうけする、という金融業の堕落。リスクを取らず浮利を追う経営に走ったキプロスの銀行は、実は大変なリスクを犯していた。国債といってもギリシャ国債をたくさん買っていたのである。国家は破綻しない、という金融常識によりかかった経営が、ギリシャ危機で裏切られた。

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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