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山田厚史の「世界かわら版」

「原発」に学ぶ「異次元」の死角
アベノ日銀はリスクが満載

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第33回】 2013年4月11日
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 黒田日銀が打ち出した大胆な金融緩和策は、人体に例えれば心臓を2倍にして2倍の血液を送りだすようなものだ。日本経済は興奮し株式市場は大商いである。たいした効果だが、強い薬には副作用がある。異次元の金融政策は異次元のエネルギーとされた原発と重なる部分がある。リスクを軽視した「強者の慢心」は危うい。

 景気好転で世間の関心が「経済」に移っている最中、福島第一原子力発電所では放射能汚染水が漏れ、制御不能の事態に陥っている。政府の収束宣言にもかかわらず、フクシマの現場ではいまも危機の綱渡りが続いている。

「出口戦略」の不在

 金融政策と原発政策は意外にも共通点がある。違和感を持つ人もいると思うが、「危機管理」の観点から見ると、両者には共通する欠落点がある。

 第一は「出口戦略」の不在。原発はすさまじいエネルギーを発生させる代償に放射性廃棄物を生み出す。「核のゴミ」といわれるが捨てられないゴミである。人体や生態系を破壊する猛毒の処理方法さえ決めず、発電を始めた。長い時間軸で考えるべき経営が短絡的採算を重視し、先のことは考えない。事故はその中で起きた。

 黒田日銀の大胆緩和は、株式・債券・外国為替の市場に大きなインパクトを与えた。目先の利益を追う人には嬉しいことだ。しかし、こんなことはいつまでも続かない。株式市場の最大のテーマは、どこまで上がるか、いつ売ればいいのか、である。

 資産価格の膨脹は「適正水準」でピタリと止めることができない。ハンドルさばきを誤ると破裂するまで膨脹する。「異次元」とまで総裁自らがいう過激な金融膨脹は副作用を覚悟すべきだろう。その副作用を見据えて「出口戦略」が用意されているとは思えない。

 「デフレ脱却に着手したばかりなのに、出口を云々する時ではない」と麻生財務相は国会で答弁したが、お膝元の財務省では、「国債バブル」が心配のタネになっている。

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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