AIの急速な普及とともに、データセンターは水冷対応への転換に迫られている。米NVIDIAに代表されるAI向けの最新GPUは水冷を前提としたモデルとなっているためだ。「GPUの熱を空気より高効率な液体に変えて循環させることで、理論上は主にファシリティで約40%の省電力効果が見込めます。GPU利用増加の状況からもデータセンターにおける空冷から水冷へのシフトは、後戻りできない潮流となっています」。そう語るのは、富士通で水冷ソリューションのビジネス開拓・コンサルを担当する荒滝新菜氏だ。
近年注目される水冷ソリューションだが、富士通は40年以上前から開発を行ってきた。
「冷却技術についてIT・ファシリティ両面で長年研究を重ねてきました。その過程で、効率の良い水冷にいち早く取り組み、ソリューションに磨きを掛けてきたのです」(荒滝氏)
富士通 ミッションクリティカルシステム事業本部 サステナブルテクノロジー事業部シニアディレクター
ビジネス開拓・コンサル担当
荒滝新菜氏
サーバーを止めない独自技術を採用
富士通が開発した水冷技術は、金融や製造業が大量のデータ処理に利用するミッションクリティカルな汎用コンピューターや、スーパーコンピューターなどの冷却に用いられてきた。かつて世界1位のスパコンとなった「京(けい)」や「富岳」にも、同社の水冷ソリューションが採用されている。
長年の実績に加え、信頼性を担保する独自技術の採用が同社の強みだ。
例えば、サーバーに冷水を送るCDU(Coolant Distribution Unit)のポンプなどの主要部品は、筐体内部で二重化、活性交換に対応する富士通ならではの技術だ。
水冷ソリューションのサービス開発・運用を担当する富士通の金城宰氏は「一般的にラックに搭載するCDUは1台ですが、CDUを保守や障害で停止する場合はラック全体のシステムが停止します。しかし、自社開発したソフトウエアと集合配管により、複数のCDUを仮想的に1台として管理し、CDUが故障してもラック横断で冷却し続けることを強みとしています。ミッションクリティカルシステム向けの水冷ソリューションとして、多くのお客さまから高い評価を頂いています」と説明する。
加えて「このソフトウエアはGPUサーバーの稼働状況に応じてCDUを自動制御する機能を実装しており、必要とする以上の無駄な冷却を防ぐことでさらなる省エネを実現します」と強調する。
富士通 ミッションクリティカルシステム事業本部 サステナブルテクノロジー事業部ディレクター
サービス開発・運用担当
金城 宰氏
省エネなどメリットの多い水冷だが、多くのデータセンターではいまだ導入が進んでいない。特に既存のデータセンターは、「水冷の運用方法が分からない」「既存の空冷センターを水冷対応させるレトロフィット(既存設備の活用)はどう進めればいいのか」「モジュール型データセンターとどちらが良いか」「GPU周辺のトレンドの変化を知りたい」「初期費用が莫大になるのではないか」といった課題を抱えているようだ。
「水冷化」に対応するためのコンサルティングサービス
こうした課題に応え、同社は導入・運用を支援する二つのサービスを提供する。
一つは「水冷プロフェッショナルサービス」。水冷化に向けたお客さまごとのデータセンターの課題をGPUトレンドを踏まえて整理し、空調・電源・運用も見据えた水冷化の設計・工事・構築を一気通貫で支援する。
「当社のほか、富士通グループやパートナーの企業と連携して、プロジェクトを支援します。当社自身が長年データセンターを運用しているので、ファシリティとIT両方の知見を持っていることが強みであり、その知見を基にお客さまごとの課題やご要望に沿った実践的な支援サービスを提供できます」と語るのは、水冷プロフェッショナルサービスを担当する富士通の小林亨氏である。
富士通が自社で運用しているデータセンターは空冷前提で設計したがこれをすでに一部水冷化し実運用をしている。このノウハウをコンサルティングによって顧客に提供する。
富士通 ミッションクリティカルシステム事業本部 サステナブルテクノロジー事業部データセンター冷却コンサル
プロフェッショナルサービス担当
小林 亨氏
もう一つは「水冷サブスクリプションサービス」。初期費用を抑えつつ水冷化を実現したい顧客向けだ。
「水冷化のために必要な装置やソフトウエア、運用サポートなどを、月額料金で利用できるサービスです。初期投資額が大幅に抑えられるだけでなく、将来の拡張も柔軟に行えるようになります」と金城氏は説明する。
電力使用効率(PUE)の向上は、逼迫する電力需要に加え、経済産業省が2029年以降の新設データセンターに「PUE 1.3」以下の達成を義務付ける方針を示しており、重要性が増している。「PUE改善に課題をお持ちのお客さまに対し、これまでのベストプラクティスやグランドデザインに基づいた最適なソリューションをご提案いたします」(小林氏)。
富士通は、水冷ソリューションを提供するほか、運用の継続性やレジリエンスを強化する分散型データセンター構想にも深く関わり、省電力プロセッサ「FUJITSU-MONAKA」や量子コンピューターの開発に取り組むなど、データセンターの未来を見据えたさまざまな取り組みを行っている。
最近は、日本の金融や製造業などの機密データを国内で安全に管理する「データ主権(ソブリン)」の意識も高まりつつある。データセンターを安定稼働させるための需要は尽きない。
荒滝氏は、「ミッションクリティカルなデータセンターを絶対に止めず、持続的な発展を支えることを目指し、これからも頑張っていきます」と語った。
荒滝新菜(あらたき・にな)
プロダクトエンジニアとしてハードウェア・ソフトウェア・クラウド開発で独自技術の製品化を担い多数の特許出願や業界団体もリード。AIやデータ事業、海外拠点の立ち上げ、業界トップ企業とのアライアンスを機会創出から実行。富士通のコア技術を軸とした新規ビジネス開拓をリードする。
金城 宰(きんじょう・つかさ)
プロダクトエンジニアとして基幹システム向けストレージシステムの開発に従事し、海外拠点やベンダなどと連携した共同開発、新製品立ち上げなどの経験多数。富士通の長いHPC開発経験で培った水冷技術をビジネスに繋げるべく、サービス事業化を担う。
小林 亨(こばやし・とおる)
プロダクトエンジニアとしてサーバ・ストレージ装置や車載機器など熱・構造を主軸に多様な開発に従事。豊富な開発経験を活かしデータセンターにおける水冷環境の設計、工事折衝、構築立上げやパートナー協業、先行技術の企画支援など多岐にわたる技術コンサルティングを担う。
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