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三谷流構造的やわらか発想法

やっぱイノベーションでしょ
~クリステンセンとゴビンダラジャンの説く「担当者の変更」の超え方

三谷宏治 [K.I.T.虎ノ門大学院主任教授]
【第58講】 2013年4月18日
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イノベーションとは
トレードオフの解消である

 前回の第57講『トレードオフかイノベーションか』では、イノベーションとはトレードオフの解消だと述べました。

 マイケル・ポーターやケビン・メイニー(上質さか手軽さか)に指摘されるまでもなく、戦略とは基本的に「捨てること」なのです。戦略オプションにおいてきちんとトレードオフを見極め、そのどちらかを捨て、もう片方の実現に資源を集中させることこそが戦略でした。

 しかし、現代社会の荒波は、そういった伝統的戦略論だけでは乗り切れないものになってきています。両立が難しいことの両立にこそチャンスがあり、それがビジネス的に成功したとき、人はそれをイノベーションと呼ぶのです。今、日本企業に求められているのは、「厳しい選択(Hard Choice)」であるトレードオフと同時に、こういったトレードオフを超えたイノベーションの創出にほかなりません。


 だからまずは、トレードオフ(みんながガマンしていること)を見つけましょう。そしてそれらを解消できないか、を考えるのです。イノベーションは、(実現不可能に見える)二律背反の発見と解消から、なのです。

イノベーションには「担当者の変更」が伴うと
シュンペーターは唱えた

 なのに、大抵の企業はイノベーションに失敗します。それを最初に指摘したのはおそらく、かの大経済学者ヨゼフ・シュンペーター(1883~1950)です。

 彼はそれを「発展担当者の変更」と呼びました。

 各都市間を結ぶ駅馬車システムはイギリスに生まれ、ヨーロッパ全土に拡がりました。しかし、産業革命とともに生まれた鉄道システムに取って代わられ、20世紀初頭には姿を消しました。

 駅馬車事業者は消え去り、鉄道事業者として生き残ることは、ほとんどありませんでした。これが「担当者の変更」です。シュンペーターはそれを必然と考えました。

 なぜこの「担当者の変更」が起こるのかを、技術ではなく顧客の視点から解き明かしたのがハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の英才クレイトン・クリステンセン(1952~)です。それまで、担当者の変更は「イノベーションが革命的で、それまでのコンピタンスが使えない」から起こると考えられていました。

 しかし『イノベーションのジレンマ(The Innovator’s Dilemma)』(1997)で彼は言いました。

イノベーション自体が革命的(radical)か漸進的(incremental)か
  は失敗(担当者の変更)に関係ない
・失敗するのはリーダー企業が「顧客志向」でありすぎるためだ

 と。

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三谷宏治 [K.I.T.虎ノ門大学院主任教授]

1964年大阪生まれ、福井育ち。小1のとき読書と読みかじりを人に教える快感に目覚め、駿台予備校では教えることの技術に衝撃を受ける。東京大学 理学部物理学科卒業後19年半、BCG、アクセンチュアで戦略コンサルタントとして働く。2003年から06年までアクセンチュア 戦略グループ統括。途中、INSEADでMBA修了。
2006年から教育の世界に転じ、社会人教育と同時に、子どもたち・親たち・教員向けの授業や講演に全国を飛び回る。「決める力」「発想力」と「生きる力」をテーマに毎年8000人以上と接している。現在K.I.T.(金沢工業大学)虎ノ門大学院 主任教授(MBAプログラム)の他に、早稲田大学ビジネススクール、グロービス経営大学院、女子栄養大学で客員教授、放課後NPO アフタースクール及びNPO法人 3keys 理事を務める。永平寺ふるさと大使。
著書多数。『一瞬で大切なことを伝える技術』(かんき出版)は啓文堂書店2012ビジネス書大賞、『経営戦略全史』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)はダイヤモンドHBRベスト経営書2013第1位、ビジネス書大賞2014大賞、『ビジネスモデル全史』(同)はHBRベスト経営書2014第1位となった。
HPは www.mitani3.com

 

 


三谷流構造的やわらか発想法

発想法ってなんのために存在するのでしょう? ヒトと違うアイデアや答えを出すためです。統計的に有意な戦略なんて、定義により無価値ですし、統計的に正しい発想法なんてあるわけがありません。発想に「普遍性」や「高確率」を求めるなんてそもそも矛盾しているのです。発想法も、然り。これまでと違うものを生み出すには、新しい発想法がいま求められているのです。

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