ダイヤモンド社は、4月17日、東京・新宿で創立100周年記念講演会「教育と人材育成でイノベーションを起こせ!—世界基準のリーダーシップの育て方—」を開催した。
講演会では、ルーム・トゥ・リード創設者兼共同理事長のジョン・ウッド氏が「教育で世界を変える」と題して基調講演を行った。ルーム・トゥ・リードは開発途上国において学校建設、図書館・図書室設置、現地語図書の出版などのインフラ整備を行い、読み書き教育と女子教育支援に取り組む国際NGOだ。2000年の活動開始以来、その成長ぶりは慈善活動の世界でもずば抜けており、数多くの賞を受賞している。ウッド氏による来日基調講演の様子をレポートする。(文/千葉はるか)

「貧しすぎて教育を受けられないが、教育を受けなければ貧しいまま」

 ジョン・ウッド氏は、まずルーム・トゥ・リードの活動について、そのミッションは“World Changes Starts with Educated Children(子どもの教育が世界を変える)”という言葉に集約されると紹介した。

世界的な社会起業家ジョン・ウッド氏が語る<br />「子どもの教育が世界を変える」ジョン・ウッド(John Wood)
ルーム・トゥ・リード創設者兼共同理事長。クリントン・グローバル・イニシアチブのアドバイザリー・ボードメンバー。 コロラド大学で経営管理学修士、ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院で経営管理学修士を取得。1999年にマイクロソフトのマーケティング部門の重役の座を捨て、ルーム・トゥ・リードを設立。アジアとアフリカの10カ国で780万人以上の子どもに教育と読み書き能力という生涯の贈り物を届けている。最新刊『僕の「天職」は7000人のキャラバンになった』には、前著『マイクロソフトでは出会えなかった天職』の“その後”が描かれている。
《ルーム・トゥ・リードの実績》(2013年3月現在)
学校建設 1500校以上
図書館・図書室開設1万5000カ所以上
現地語出版 874タイトル
女子教育支援 2万人以上

Photo: 宇佐見利明

 現在、世界には読み書きできない人が8億人近くもいると言われる。開発途上国の子どもたちが幼いころから読み書きの教育を受けることができれば、貧困から抜け出せる可能性は高まる。教育を受けた親はより健康な子どもを育て、学校を卒業した女性は地域社会で認められ、選挙の投票率も上がる。

 子どもの教育促進は、食糧問題や環境保護などと同様にきわめて重要な社会問題であり、教育の問題を解決することこそが世界を大きく変えるために最も重要であるというのがウッド氏の考えだ。

 ルーム・トゥ・リードが設立した図書館は、2000年の活動開始から10年あまりで1万5000カ所に達し、現在は約780万人の子どもたちに利用されている。

「私たちは、カンボジア、ベトナム、ラオスといった貧しい国に生まれた子どもたちに手を差しのべたいと思っています。現在の目標は、2015年までに、貧困にあえぐ国々の1000万人の子どもたちに教育の機会を与えることです」(ウッド氏)

 ITブーム全盛期だった1998年、ウッド氏は30代にして米マイクロソフト社の要職につき、中国の事業開発者として多忙な日々を送っていた。ところが、休暇をとってネパールへトレッキングの旅に出たことで、彼の人生は大きく変わることになる。現地でたまたま案内された学校には、450人もの子どもたちが通っているにもかかわらず、子ども向けの本が1冊もなかった。

「私たちは貧しすぎて教育を受ける余裕がありません。でも、教育を受けないかぎり、貧しいままなのです」という校長の言葉に突き動かされ、3000冊の児童書をその学校に届けたことが、ルーム・トゥ・リードの活動につながっていくことになった。

 その後、ルーム・トゥ・リードは猛スピードで成長を遂げている。「現在は2万人の女子奨学生を支援しています。建設した学校は1650校にのぼり、過去5年間で36時間に1校を建てた計算です。いまでは、私たちのチームは図書館・図書室を1日に6カ所設立、4時間に1つのペースで建設しています。さらに、2万人以上の教師や司書のトレーニングをし、1200万冊の現地語の本を発行してきました」(ウッド氏)