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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

真面目でガリ勉、少しシャイな李克強は
構造改革実行で真の「宰相」になれるか

加藤嘉一
【第9回】 2013年7月30日
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 「克強は政治改革の重要性を明確に理解している。ただ、彼は主席ではなく総理。担当は経済だから、経済の構造改革や自身が学部生時代に専門的に学んだ法学を生かすべく、法治主義の徹底を直視し、推進していくと思う」

 2011年の秋、国務院総理、李克強氏の同僚として北京大学で勤務した経験のある実業家が、北京で私にこう言った。第18党大会を一年後に控えたあの頃、ポスト胡錦濤・温家宝体制の人事や政策を巡る議論が中国の首都では活性化していたのを覚えている。

 李克強氏は共産主義青年団(共青団)出身で、胡錦濤前国家主席が自らの後継者にすべく可愛がってきた人物であるが、あの頃すでに、“李克強国家主席”という目録は実現し得ないことを胡錦濤・李克強両氏は自覚していたであろう。それどころか、北京では「李克強は総理にすらならないんじゃないか?」という憶測すら聞こえ始めていた。

 当時、常務副総理として行政改革(中国語で「大部制改革」)などを担当していた李氏に対する評価は総じて高くなく、「一国の経済をつかさどる国務院総理として、これからの10年間を全うできるのか?」という疑問の声も広がっていた。

寡黙で奢らず
決して浮つかない

 2012年11月27日、第18党大会が閉幕した直後、英フィナンシャル・タイムズ中国語版は「同学眼里的李克強」(クラスメートから見た李克強)という記事を掲載している。

 語り手は1978~82年の間、北京大学法学部でクラスメートとして李克強氏とともに学生生活を送った陶景洲氏(弁護士、米Dechert法律事務所アジア業務執行パートナー)である。「李克強」という中華人民共和国国務院総理の人物像を、私たち外国人が知る上で貴重な一次情報であるし、私の考察からしても、かなり克明に同氏の性格や個性を捉えている素材だ。以下少しだけ紹介してみたい。

 「厳かで、真面目で、ガリ勉型。そして、結構シャイだった」

 陶氏は1978年、北京大学のキャンパス内で初めて会った李克強氏の「第一印象」をこのように記憶している。ちなみに、陶氏も李氏も共に上海の南西部に位置する安徽省の出身である。

 陶氏は1981年に北京大学南門の前で李氏と撮った写真を紹介しながら(上記FTリンク参照)、「集合写真を撮るとき、李克強はいつも後ろ、あるいは端っこに立つことを好んだ。普段は寡黙で、決して奢らず、浮つかない。学習面で彼に質問をすれば、必ず回答があった」

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

「加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ」

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