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山田厚史の「世界かわら版」

あえて熱狂・東京オリンピックの死角を問う

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第44回】 2013年9月12日
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世界は政治家の言葉に厳しい

 それにしても大胆な発言だった。

 「放射能汚染水の影響は原発港湾の0.3平方キロメートルに完全にブロックされている」

 汚染水は制御不能になっているから問題なのだ。安倍首相が「コントロール下にある」と言ったのは「嘘をついた」ことにならないか。

 9月7日ブエノスアイレスで開かれたIOC(オリンピック)委員会での発言は、「原発事故などたいしたことではない」と世界に公言したようなものである。フクシマの現実はそんなに軽くはない。2011年には高濃度の放射能物質が外洋に流れ出ている。日本原子力研究開発機構のシミュレーションによれば、来年にはハワイ沖に達するという。いずれ国際的な問題になるだろう。「完全にブロックされている」と事実に反する発言をした責任を問われることになるかもしれない。

 日本では「政治家のことば」は聞き流されるが、世界は「政治家の嘘」に厳しい。

 福島沖で高い汚染値が観測されていないのは観測体制に問題があるから、ともいわれる。今回の汚染水の流出も参議院選挙の開票直後に公表された。流出は前から続いていたのに「異常なし」だった。

 首相は「汚染濃度は安全基準よりはるかに低い」という。放射能が海に拡散しているから濃度が下がっているだけだ。「水割り」にすれば基準値に収まる、というのが政府や東京電力の考えのようだ。

 福島原発の敷地は汚染水のタンクで埋まっている。メルトダウンした核燃料がどこにあるかも正確には分からない。水を掛けて冷やす作業は十年は必要だが、汚水を貯めるタンクの置き場がない。結局は水で薄めて海に流すという「水割り作業」が東京五輪までに始まるだろう。

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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