大手銀行のクレジットカード会社が金利ゼロで金を貸してくれるDMが頻繁に届いた。新規勧誘の特別キャンペーンだと言う。借りてみた。本当にゼロ金利だった。でも半年すると金利は39%に跳ね上がった。
米国では利用代金を翌月に全額支払う義務がない。カード会社が決める小額の最低支払額だけを支払えばよい。支払われなかった部分は自動的に借入として扱われる。そしてそれには利息が発生する。まとまった金額の借入も限度内で簡単にできる。カード会社は利用者が安易に借金できるようにしているのだ。
その上、この国には金利の上限を定める「利息制限法」がない。銀行は自行の事情で金利を変更できる。約款を読むと、非常に分かりにくい英語ではあるが、「その他の事情により銀行は金利を変更できる」と書いてある。
昔、クレジットカードは利用代金を翌月に支払う商品だった。支払後に借入残高は残らなかった。デパート、石油会社、航空会社の発行するカードも多かったし、独立系のクレジットカードも多く存在した。ところが4-5年前から大手銀行がこうしたカード会社を次々に買収し、利用代金を一部支払う方式を導入し、借入を簡単にできるようにした。
いまではカード会社の大半はアメリカンエクスプレス、シティバンク、バンク・オブ・アメリカ、JPモルガンチェースの傘下に入っている。ひとつの銀行で10数種類のカードを発行している。
銀行系カード会社は新規の顧客を獲得するために、「最初の半年間ゼロ金利キャンペーン」を展開した。もし他のカード会社からの借入残高を移行してくれるなら、最初の半年間の利息はただにするという、残高奪い合い競争が激化した。
どの家庭でも1ヵ月間に10通以上のDMを受け取ったのではないだろうか。多くの消費者が甘い言葉に誘われて消費を増やし続けた。そしてあるとき理由も告げずに金利が突然20-30%になった。
そして昨年9月にリーマン・ショックが起きた。クレジットカードを発行するシティバンク、バンク・オブ・アメリカといった大手銀行の多くが不良債権を抱えていることが明るみに出た。当時、不良債権の中身はサブプライム・ローンや金融派生商品が主であった。窮地に陥った銀行はアメリカ政府に公的資金による支援を願い出た。もはやカードキャンペーンをやっている余裕はない。カード会社は一斉にキャンペーンを止めた。