住宅価格の上昇が続く中で、マイホーム取得を急ぐ人も多い。しかし、必死に見学をして、迷い、決断して、金利の低い銀行を探し、いざ住宅ローンを組もうとしても「審査に落ちた」といった人が少なくない。物件にも支払い計画にも問題ないのに、一体なぜ審査に落ちてしまうのだろうか。本記事では、住宅ローン審査の厳しさと、見落としがちな落とし穴について解説する。(鈴木豪、ダイヤモンド・ザイ編集部)
「まさかこんなことで?」
住宅ローン審査の厳しさ

念願のマイホーム購入。その夢を叶えるためには、ほとんどの人が住宅ローンを利用することになる。しかし、金利の低いネット銀行や大手銀行に申し込んだにもかかわらず、「審査に落ちた」という声は意外と多く聞かれる。
購入しようとしている物件が違法建築だったり、年収の10倍の無謀なローンを組もうとしていたり、すでに消費者金融から借入れがあったりするなら、審査に落ちるのも納得がいく。しかし、心当たりのないような些細なことが原因で審査に落ちるのが住宅ローンだ。実は、その審査は想像以上に厳しいものなのだ。
特に、低金利でネットから手軽に申し込める人気のネット銀行や大手銀行ほど、わずかな不審点やマイナスポイントがあると、機械的に審査を落とす傾向にある。これは、厳しい審査を通過した超優良顧客にのみ融資することで、低金利を実現しているためである。
審査落ちの典型例の筆頭
「うっかり」でマイホームが遠のく

「あんなことで!」と驚かれる審査落ちの原因で多いのが、過去の支払い漏れである。典型的なのは、クレジットカードの引き落とし日に口座残高が不足し、支払いが遅れてしまうような支払い漏れだ。たとえ1日でも、少額であっても、支払い漏れは「事故」として記録が残り、その情報は信用情報機関を通じて5~7年間、金融業界で共有される。「別の金融機関での支払い遅れだからバレないだろう」という考えは通用しない。
予防策としては、クレジットカードを使いすぎないことが第一だが、もし引き落とし日に預金残高が不足しそうなら、カード会社に連絡して分割払いに変更してもらうなど、何としても支払い漏れの履歴を作らないようにしよう。なお、カードで何を買っていたかといった情報は銀行には伝わらないため、「無駄なブランド品ばかり買っていた」といった内容は影響しない。
若い世代ほど要注意!
携帯電話料金と奨学金は甘く考えてはダメ
次に、特に若い世代に多い落とし穴がある。それは、携帯電話料金の支払い漏れだ。携帯電話料金が水道代などと大きく違う点は、月々の支払いに端末代金(スマートフォンの機種代金)の分割払いが含まれている人が多いことである。この分割払いは「借金」であり、その返済が滞ることは信用を傷つける立派な事故となる。
「借金」という点では、車のローンや奨学金も同様である。いずれも返済の遅れや滞納があると、「借りたお金を約束どおり返さなかった」と判断され、審査落ちの要因となる。特に奨学金は金融機関ではないので、甘く考えている人も見受けられるが、日本学生支援機構の例では、返済の滞納が3カ月続けばその情報が信用情報機関(詳細は後述)に登録される。収入が低い若い頃は、家計が苦しくなって、奨学金の返済をつい後回しにしてしまうこともあるが、それが住宅ローン審査が通らない理由になる。
支払い漏れがあっても
諦めるのはまだ早い!
もっとも、こうした支払い漏れがあっても諦めるのは早計だ。「感染症でコンビニに支払いに行くのも辛く、翌週になってしまった」といったように、対面で弁明する機会のある銀行であれば、考慮してもらえることが多い。1回でも支払い漏れがあったら即座にNGというわけではないため、支払い漏れがあった日時に資金が足りなかったわけではないことを証明する通帳の写しなどを提出してみるべきだ。「資金ショートで支払いが滞ったわけではない」という事実が、審査では重要視されるからである。
ただし、短い期間に複数回あったり、督促を放置した履歴があったりすると、「お金にだらしない人」と評価され、審査はかなり厳しくなる。
なお、支払い漏れや滞納の履歴は、信用情報機関を通じて業界で共有される。その記録は5~7年で抹消されるため、記録が消えた後に審査に再チャレンジするか、個別事情を汲んでくれる地域密着型の地銀や信金などに相談してみよう。