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逆境経営 ~山奥の地酒「獺祭」を世界に届ける逆転発想法~
【第10回】 2014年3月26日
著者・コラム紹介バックナンバー
桜井博志 [旭酒造株式会社 代表取締役社長]

ビジネスの仕組みを変えれば働く人の意識が変わる!
「獺祭」が学ぶ、無印流“意識改革”の神髄
松井忠三 良品計画会長 × 桜井博志 旭酒造社長 対談【後編】

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「無印良品」は、利用者が自由な発想で使えるシンプルさと品質の高さという、バブル時代の象徴だった高級ブランドとは対極のコンセプトで、瞬く間に世の中の支持を受けました。今や海外でも260店舗を展開し、グローバル化を進めていますが、その道は苦難の連続だったとか。同じく逆境の中でうまれた純米大吟醸<獺祭>も、その本質を高めて世界で勝負したいといいます。無印良品を率いてきた良品計画・松井忠三会長に、<獺祭>を展開する旭酒造・桜井博志社長が、ブランド維持や人材育成の要諦を聞きました。

抜本的な改革に乗り出すと、
内部で順法闘争が発生する!?

桜井 10年間もの増収増益という快進撃が止まってしまったとはいえ、すぐさまその原因を解明されたところはさすがですね。社長に就任された2001年度を底として、わずか1年でV字回復を達成されました。

松井 いえ、それは業績が落ち込んで初めて、その原因を考えたわけです。不振に陥った当初は混乱の極みで、責任の押し付け合いも始まり、たとえば衣料品部門の担当部長は3年間に5回も交代するという“異常”事態でした。

松井忠三(まつい・ただみつ)1949年、静岡県生まれ。株式会社良品計画会長。73年、東京教育大学(現・筑波大学)体育学部卒業後、西友ストアー(現・西友)入社。92年良品計画へ。総務人事部長、無印良品事業部長を経て、2001年に社長就任。赤字状態の組織を「仕組み」の見直しをテコに改革し、業績はV字回復を遂げた。現在も、組織の「仕組みづくり」を継続している。08年より現職。著書に『無印良品は、仕組みが9割 仕事はシンプルにやりなさい』(角川書店、2013年)。

 人間の意識改革といっても、意識から変えるのは本当に至難の業で、まずビジネスの仕組みを再構築してこそ、そこで働く人の意識が変わるものです。私は西友に在籍した18年間のうち15年を人事部で過ごし、幹部の意識改革プログラムなどをやっても全く成果がなかった経験から、それを痛感していました。

 ところが、じゃあビジネスの仕組みからまずは変えよう!と始めると、順法闘争(合法的にストライキと同等の効果を狙う労働闘争戦術)を仕掛ける人が内部から必ず出てきます。たとえば、店内の全アイテムで約半数〜3分の1が欠品して機会損失を起こしていたため、自動発注システムの導入に踏み切ったときのことです。当時、欠品の要因の約2割は供給遅れなど本部側の問題でしたが、残る約8割が店側の発注に問題があったための決断でした。しかし、自動化されると今まで発注を任されてきたパート社員は発注権限を一切失うため、「(仕事の面白みを奪われて)可哀想だ」という声が社内で飛び交ったのです。

桜井 確かに、発注担当者は、倉庫や店頭の在庫をチェックし、さらに売れ行きなどを踏まえて自らの判断で注文を入れるという作業に大きなやり甲斐を感じてきたのでしょうが、そこまで欠品している状況で「可哀想」といわれても会社としては困りますね…。

松井 しかも、自動発注システムにも欠陥がありました。過去と直近の売れ行きを加味して自動発注するシステムだったのですが、前年実績に天候や特売実施など特殊要因による異常値があっても、それを除くほど精緻には予測をしてくれません。その結果、導入当初は人間の予測をはるかに下回る発注しかできず、納品がメチャクチャになって批判が相次ぎました。

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桜井博志 [旭酒造株式会社 代表取締役社長]

1950年、山口県周東町(現岩国市)生まれ。家業である旭酒造は、江戸時代の1770年創業。1973年に松山商科大学(現松山大学)を卒業後、西宮酒造(現日本盛)での修業を経て76年に旭酒造に入社したが、酒造りの方向性や経営をめぐって先代である父と対立して退社。79年に石材卸業の櫻井商事を設立して集中していた。父の急逝を受けて84年に家業に戻り、純米大吟醸「獺祭」の開発を軸に経営再建をはかる。社員による安定的な旨い酒造りを目指し、四季醸造の実現や遠心分離機の導入など改革を進めた。2000年頃から始めた海外販売を本格強化するため、2014年のパリを皮切りに海外直営店を出店予定である。


逆境経営 ~山奥の地酒「獺祭」を世界に届ける逆転発想法~

純米大吟醸「獺祭」を展開する旭酒造は、約30年前、普通酒を主体とするつぶれかけの酒蔵でした。先代である父の急逝により、急遽三代目を継いだ著者は、目の前の常識を疑い、新たな酒蔵として生まれ変わるべく、改革を進めます。変革を可能にし、海外約20カ国に展開するまでに至った、熱い心と合理的思考法を紹介します!

 

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