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生活保護のリアル みわよしこ

生活保護当事者の住宅扶助はいくらにすべきか
アメリカに学ぶ「住」の最低基準の定め方

――政策ウォッチ編・第59回

みわよしこ [フリーランス・ライター]
【政策ウォッチ編・第59回】 2014年4月4日
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生活保護基準の見直しが議論されるとき、その生活保護基準が担保すべき「健康で文化的な最低限度の生活」の具体的内容は充分に検討されているだろうか? 

戦後の混乱期に発足した生活保護制度は、生活保護基準の定め方をさまざまに変化させ、その時々に最低生活費を定めてきた。しかし、「健康で文化的な最低限度の生活」のありかたに関する具体的な議論は、ほとんど行われてこなかったと言ってよい。

現在開催中の生活保護基準部会は、「住」という生活の根本について、どのような議論を行っているだろうか?

住宅扶助が焦点となっている
生活保護基準部会

 厚労省の社会保障審議会・生活保護基準部会(以下、基準部会)は、かつては5年に1回の生活保護基準見直しのたびに開催されてきたが、2012年からは常設の部会となっている。基準部会が2013年1月にまとめた報告書が、同月、厚労省の発表した生活扶助引き下げ方針の根拠となった(ただし、その基準部会報告書には、「だから引き下げが妥当である」と読み取れる内容は含まれていない)。最大で約10%にも及ぶ生活扶助の引き下げは、2013年8月・2014年4月・2015年4月の3段階に分割されて行われる予定である。現在は、4月1日に2回目の引き下げが行われて間もない時期だ。

 その後、2013年10月から基準部会は再開されており、生活扶助以外の扶助についての議論が続いている。2014年3月4日に開催された第16回基準部会では、主に就労支援・住宅扶助が話題となった。また、2013年1月の報告書で採用された生活扶助基準の検証手法についても、引き続き、検討が行われる予定である。

 今回は、住宅扶助についてどのような議論が行われたかを主に紹介したい。

2014年3月4日に開催された第16回生活保護基準部会の資料は、議事録ともども、厚労省のWebページからダウンロードされた。住宅扶助だけではなく、就労支援・生活扶助基準の検証手法など、幅広いトピックが議論された
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住宅扶助の何が
争点になっているのか

 生活コスト、特に「住」にかかわるコストが高い日本では、「自分の住環境には不満がない」と思える人は多くないだろう。住まい探しのたびに、家賃・広さ・間取り・地域・最寄り駅からの距離など数多くの要因に優先順位をつけ、「どれをどこまで譲れるか」と悩みつつ、住宅情報を穴が開くほど見つめる。入居したあとは、妥協した要因にガマンしつづけるか、あるいは問題にならないように対策しつづける。それが人々の多くにとっての「住」であろう。いきおい、生活保護当事者の住環境に関する視線は辛口になりがちだ。

 本連載でも過去数回にわたり、生活保護当事者の「住」に関する問題を取り上げてきたが、必ず「生活保護のくせにゼイタクだ」「寝泊まりできれば充分だろう、プライバシーのない相部屋でも文句を言うな」「住宅コストの高い東京に生活保護当事者を住ませるな」といった感情論や暴論がネットに散見される。自分の住環境に不満があればあるほど、「労働」という対価なしに多くのものを得ているかにみえる生活保護当事者の「住」が許せなくなる。それは、少なくとも日本人であれば、人として当然の感情なのかもしれない。

 しかし基準部会は、感情論に根拠らしきものを与えるために、住宅扶助に関する議論を重ねているわけではない。

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、1匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


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急増する生活保護費の不正受給が社会問題化する昨今。「生活保護」制度自体の見直しまでもが取りざたされはじめている。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を知ってもらうことを目的とし、制度そのものの解説とともに、生活保護受給者たちなどを取材。「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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