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「新規ビジネス参入」の真意を話そう
自らを変化させ続ける任天堂の未来とは
――岩田 聡・任天堂社長インタビュー【前編】

石島照代 [ジャーナリスト]
【第49回】 2014年4月28日
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Photo by Teruyo Ishijima

岩田 山内は「任天堂は娯楽の会社で、娯楽以外はしないほうがいい」としきりに言っていた一方で、「娯楽=ビデオゲーム」とは考えていませんでした。その山内の想いを引き継ぎながらも自分はこの気持ちをどう表現するべきなんだろうと、年末年始の休みの間も含めて、ずっと考えていました。

 最初は「QOL(クオリティ・オブ・ライフ)」という言葉が出てきました。人々の生活の質を高めるために娯楽はある、衣食住のあとに娯楽はあるものですから。でも「人々のQOLを向上させる」だけだと、任天堂と家電メーカーさんとの違いはちっともわからない。それで年が明けた頃にやっと、「人々のQOLを楽しく向上させる」という、「楽しく」と言葉を入れることが任天堂にはちょうどいいということに、ようやく気づきました。これを軸に1月の経営方針説明会でお話ししようと決めて、あのプレゼンテーション原稿を書きました。

ゲームビジネス以外のことを
社員はやりたいと思っている?

――なるほど。ですが、任天堂にテレビゲームを作りたくて入ってきた人は、岩田さんのその考えについていけないかもしれませんね。たとえば、「ゲームのユーザーを絞り込んでゲームを作れば儲かるのに」とか言われませんか。

岩田 確かに、はっきり申し上げますと、「人々のQOLを楽しく向上させる」と私が突然言い出したことを不思議に思っている社員がいるのは当然だと思います。

 世の中の常識的な考え方からは、「ターゲットとするお客様を絞ったほうが成功確率は高い」と言われますが、できるだけたくさんの人と関わりを持って、より数多くの人たちの生活を豊かにするお役に立てたほうが、任天堂という会社が存在する意味が大きいと思っています。

 任天堂の個性のひとつは、ターゲットとするお客様を過剰に絞らないことです。具体的には、「今実際に製品を受け入れていただいているお客様以外にも、私たちの製品を喜んでもらったり楽しんでもらったりする方法が必ずあるはずだ」と常に考えるようにしています。

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石島照代
[ジャーナリスト]

1972年生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年からゲーム業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。「コンテンツの配信元もユーザーも、社会的にサステナブルである方法」を検討するために、ゲーム業界サイドだけでなく、ユーザー育成に関わる、教育と社会的養護(児童福祉)の視点からの取材も行う。Photo by 岡村夏林

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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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