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変わりゆく大学のいま~激流の中で みわよしこ

激しい競争を勝ち抜いた優秀な研究者が続々集結
東北大学が世界トップレベルの研究拠点になれた理由

国立大学事務部門の挑戦(1)

みわよしこ [フリーランス・ライター]
【第5回】 2014年5月23日
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このところ、科学研究に関するさまざまな事件とその報道を通じ、科学と研究、さらに研究を行う場そのものへの関心が高まっている。

今回と次回は、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の事務部門を通じて、研究を支える人々とその仕事を紹介したい。研究の場を構築し、運営するとは、どのようなことなのだろうか? 機構トップは、どう考えているのだろうか? 事務部門は、そこでどのような役割を果たしているだろうか?

「優秀な研究者」はどこに?
東北大AIMR独自のリクルート

 東北大学原子分子材料科学高等研究機構(東北大AIMR)の機構長を2012年4月より務めている小谷元子氏は、機構の運営・研究・教育など多忙な日常の中で、研究者のリクルーティングのためのアンテナを張り巡らせている。

こたに・もとこ
東北大学大学院理学研究科数学専攻教授・原子分子材料科学高等研究機構長。1983年東京大学理学部数学科卒、1990年理学博士(東京都立大学大学院理学研究科)、1999年より東北大学大学院理学研究科助教授、2004年~同教授、2008年~ディステングイッシュト・プロフェッサー。また、2011年より東北大学原子分子材料科学 高等研究機構副機構長、2012年より同機構長。2005年第25回猿橋賞受賞。現在は東北大学副理事(研究担当)・総合科学技術会議の有識者議員も務める。
東北大AIMR提供

 「常に『優秀な研究者』、日本に、AIMRに来てくれる『優秀な研究者』を探しています」(小谷氏)

 「優秀な研究者」とは、東北大AIMRの一員となって共にチャレンジしてくれる研究者のことである。

 「私は、材料科学分野の『ふつう』には、馴染みがありません」(小谷氏)

 東北大AIMRは、文部科学省「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)」の一拠点として2007年に設立された。機構のミッションは、異なる背景の材料科学を統合し、材料科学の新しい分野を創設することである。2代目の機構長となった小谷氏は、数学者(東北大学大学院理学研究科教授を兼任)である。小谷氏のミッションは、材料科学分野での異分野融合を数学で加速することであった。材料科学研究のうち、特に実験を中心とする材料科学研究の「ふつう」「日常」といったものへの馴染みが薄いのは、当然といえば当然であろう。では、数学者である小谷氏は、どのようにして実験系の研究者を含む材料科学の研究者たちをリクルートしているのだろうか?

 「学会・国際会議・海外の研究機関との協力など、ありとあらゆる人的ネットワークを通じて、常に情報を収集しています。『ここに、こういう優秀さを持つ研究者がいる』という情報を得て、『この人は』と思ったら、まずは会って話をします」(小谷氏)

 リクルーティングの努力は優秀な人々に関する情報収集にはとどまらない。時には、大学のルールを改革しなくてはならないこともある。たとえば、研究者が複数の機関に所属し、それぞれの機関から別途報酬を得ることは、世界的には珍しくない。日本の場合、雇用契約で兼業を禁止していることが多いため、違和感を感じられる読者も多いであろう。ただ日本の国立大学でも、原理的に可能である。貢献度に応じた報酬の配分を契約によって行えばよい。AIMRからのアクションをきっかけに東北大学では「ジョイント・アポイントメント制度(複数の機関に所属し、双方から報酬を得ることを可能にする制度)」を確立した。このことにより数多くの「優秀な研究者」を東北大AIMRに迎えてきた。

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、1匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


変わりゆく大学のいま~激流の中で みわよしこ

大学、大学院を卒業しながらも、安定的な職に就くことができない、高学歴ワーキングプア、非正規博士…が増加し続けている。そうした背景にあるのが、「大学」自体の混乱だ。少子化による学生の減少、大学乱立による入学者不足による経営難、国立大学の法人化、研究資金の削減…などきりがない問題を抱えるいま、大学はどうこの苦難を乗り越えようとしているのだろうか。本連載では、変わりゆく・変わらざるを得ない大学の「現在」を、関わる人々の姿や言葉とともに紹介していく。

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