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生活保護のリアル みわよしこ

守りたいのは生活保護利用者たちの既得権?
生活保護基準引き下げ反対訴訟が持つ本当の意味

――政策ウォッチ編・第73回

みわよしこ [フリーランス・ライター]
【政策ウォッチ編・第73回】 2014年8月22日
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2013年8月に始まった生活保護基準引き下げに対し、自治体や国に対する訴訟の動きが相次いでいる。この動きに対し、「既得権を守りたいだけでしょう?」「国にぶらさがっているくせに不平不満?」という意見も多い。地域によっては「福祉事務所のケースワーカーに嫌がらせされるかも」という不安を抱える人もいる。では、それを乗り越えて審査請求や提訴に踏み切った生活保護利用者たちは実際のところ、何を守るために行動を起こしているのだろうか?

生活保護基準引き下げに
約1万3000人が審査請求、提訴へ

2014年8月1日、厚生労働記者会において、生活保護基準引き下げに反対する訴訟に関する記者会見が開催された。参加した報道関係者は10名程度。熱心な取材が行われていた

 2013年8月1日、生活保護基準引き下げが行われた。この基準引き下げは、厚労省が2013年1月に発表した生活扶助引き下げ方針に基づくものだ。2013年8月1日・2014年4月1日・2015年4月1日の3回にわたって、生活扶助費は合計で平均6.5%(最大10%)減額される予定となっている。

 この引き下げに対し、全国の生活保護利用者たち1万2900人(厚労省発表)が審査請求を行った。生活保護基準の引き下げは、生活保護利用者たちにとっての不利益待遇にほかならないため、審査請求を行う権利が保障されている。審査請求は2013年12月の年末一時扶助・冬季加算引き下げに対して、また2014年4月1日の生活扶助引き下げに対しても行われ、延べ人数は2万人以上となっている。また、審査請求の棄却を受けての再審査請求も行われている。

 もちろん、審査請求の結果、生活保護費が増額されることはありえない。審査請求を行う対象は各自治体であるが、生活保護基準は厚労省によって決定されているからである。

 2014年2月からは、各自治体に引き下げの取り消しを求める行政訴訟も、佐賀県を皮切りに開始されている。現在、佐賀県・熊本県・愛知県・三重県・埼玉県で既に提訴が行われている。提訴に参加する生活保護当事者は、少なくとも500人以上に達すると見込まれている。

 地域によっては、国に対する賠償請求もセットとなっている。賠償請求額は一人あたり1万円で、精神的苦痛に対する象徴的な金額ということだ。

 今回は、この訴訟の意味について考えてみたい。

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、1匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


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急増する生活保護費の不正受給が社会問題化する昨今。「生活保護」制度自体の見直しまでもが取りざたされはじめている。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を知ってもらうことを目的とし、制度そのものの解説とともに、生活保護受給者たちなどを取材。「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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