2013年8月に始まった生活保護基準引き下げに対し、自治体や国に対する訴訟の動きが相次いでいる。この動きに対し、「既得権を守りたいだけでしょう?」「国にぶらさがっているくせに不平不満?」という意見も多い。地域によっては「福祉事務所のケースワーカーに嫌がらせされるかも」という不安を抱える人もいる。では、それを乗り越えて審査請求や提訴に踏み切った生活保護利用者たちは実際のところ、何を守るために行動を起こしているのだろうか?
生活保護基準引き下げに
約1万3000人が審査請求、提訴へ
2013年8月1日、生活保護基準引き下げが行われた。この基準引き下げは、厚労省が2013年1月に発表した生活扶助引き下げ方針に基づくものだ。2013年8月1日・2014年4月1日・2015年4月1日の3回にわたって、生活扶助費は合計で平均6.5%(最大10%)減額される予定となっている。
この引き下げに対し、全国の生活保護利用者たち1万2900人(厚労省発表)が審査請求を行った。生活保護基準の引き下げは、生活保護利用者たちにとっての不利益待遇にほかならないため、審査請求を行う権利が保障されている。審査請求は2013年12月の年末一時扶助・冬季加算引き下げに対して、また2014年4月1日の生活扶助引き下げに対しても行われ、延べ人数は2万人以上となっている。また、審査請求の棄却を受けての再審査請求も行われている。
もちろん、審査請求の結果、生活保護費が増額されることはありえない。審査請求を行う対象は各自治体であるが、生活保護基準は厚労省によって決定されているからである。
2014年2月からは、各自治体に引き下げの取り消しを求める行政訴訟も、佐賀県を皮切りに開始されている。現在、佐賀県・熊本県・愛知県・三重県・埼玉県で既に提訴が行われている。提訴に参加する生活保護当事者は、少なくとも500人以上に達すると見込まれている。
地域によっては、国に対する賠償請求もセットとなっている。賠償請求額は一人あたり1万円で、精神的苦痛に対する象徴的な金額ということだ。
今回は、この訴訟の意味について考えてみたい。