Amazon Adsを起点に「欲しいときに思い出してもらえる存在」へ。“未知”への挑戦で自社ブランドの“道”を切り開いた和平フレイズ

今や私たちの生活に欠かせないオンラインストアは、大企業と肩を並べて中小企業がしのぎを削っている世界だ。Amazonでも、多くの販売事業者が新しいお客さまとの出会いを求め、自社商品やブランドの魅力を伝えようと奮闘している。

「Rising Stars(ライジングスターズ)」は、そんな日々挑戦を続けるAmazon販売事業者の"いま"を切り取ったドキュメンタリーシリーズだ。2025年は、「挑めば、未知は道となる。」というテーマの下で展開される。予算や人員が限られている中で、どのように広告を活用し、商品の魅力をお客さまに伝え、売り上げにつなげているのか。試行錯誤を続け、時には壁にぶつかりながらも、事業者自らが「道」を切り開き「未知への挑戦」を続けていく等身大の姿を追いかけている。

今回紹介する和平フレイズは、まさに何も分からない「未知」の状態からAmazonでの販売を開始。幾つもの困難に直面しながらも挑戦を止めず、大きな成長を続けてきた。中でもターニングポイントとなった三つの挑戦について、Amazonでの販売を担当する三人に語ってもらった。

 新潟県燕市に本社を置く和平フレイズは、フライパンや鍋など、家庭用調理器具を中心とした生活用品の企画・開発・販売を行っている企業だ。「食文化創造企業」を掲げ、1951年の創業以来、消費者のニーズをスピーディーに反映させた商品を手掛けて成長してきた。

Amazon Adsを起点に「欲しいときに思い出してもらえる存在」へ。“未知”への挑戦で自社ブランドの“道”を切り開いた和平フレイズ和平フレイズは、フライパンや鍋をはじめとする数多くの家庭用調理器具・生活用品をAmazonで販売している

 同社製品は元々、結婚式の引き出物として人気を集めていた。しかし、時代の変化に伴って引き出物の在り方そのものが変わった。ライフスタイルや価値観の多様化により、カタログギフトが主流になったことで販売量が低下したのだ。そこで、オフラインの店舗や商品点数の拡大に加え、新たな販路をオンラインに求め、2005年にAmazonでの販売を開始する。

【挑戦1】
何もかも「未知」の状態でのAmazon参入

 ところが当時、同社はオンラインストアでの販売経験がなかったため、どうやって売ればいいのか、まったく分からない状態だった。同社のAmazonチームを率いる営業本部第一営業部の中野勉部長は、当時をこう振り返る。

「本当に何一つ分からない状態でした。オフラインでの展開がメインでしたので、ウェブ用の製品画像も用意しておらず、どんなキャッチコピーが必要なのかも分かりません。やることといったら、ただオンラインストアに商品を登録するだけだったのです」(中野部長)

 広告予算も確保できていなかった。会社が広告運用に消極的だったということではない。Amazonでの販売を成功させるために広告を展開するという発想自体がなかったのだ。

「商品を登録して、お客さまが見てくれれば買ってくれるだろうという考え」(中野部長)だったが、当時はオンライン市場が拡大期だったこともあり、売り上げは緩やかながら伸びていったため、さしたる改善策も打つことができなかった。

Amazon Adsを起点に「欲しいときに思い出してもらえる存在」へ。“未知”への挑戦で自社ブランドの“道”を切り開いた和平フレイズ和平フレイズ 営業本部 第一営業部 部長 中野 勉

 日々試行錯誤を繰り返すことで、ノウハウがたまらなかったわけではない。「Amazonのスポンサー広告を活用することで、商品に関心を持つお客さまへ効果的にリーチできることが少しずつ分かってきました」とEC企画課の梨本千ひろマネジャーは振り返る。

 しかし、広告運用の具体的な方法が分からなかったため、どの製品に広告をかけるか、広告予算をどのように配分するかを「ヤマ勘」で決めていたという。

 結果として、和平フレイズのAmazonチームは、大きな壁にぶつかることになった。次ページでは、その壁をいかに乗り越えたのか、同社の挑戦を紹介していく。