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岸博幸のクリエイティブ国富論

原発再稼働を巡る政治の不作為

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第275回】 2014年9月12日
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 川内原発の安全審査の合格書がようやく原子力規制委員会から出されました。これで川内原発は再稼働に向け、地元自治体の同意という最後のプロセスに進むことになりますが、再稼働は既に当初の見込みから1年以上も遅れています。その原因は何か、今後は順調に再稼働が進むのかという点を考えると、政治の不作為という問題点が浮かび上がるように思います。

原子力規制委員会の
“後出しジャンケン”を放置する不作為

 もちろん、原発の再稼働に反対する意見は未だ多いのは事実です。しかし、経済活動や国民生活を維持するためには、少なくとも短期的には安全性が確認された原発を再稼働させることが不可欠です。

 その観点から考えると、原発再稼働が既に1年以上も当初の見込みから遅れていること自体がひどい話なのですが、その原因としてはまず原子力規制委員会の安全審査の杜撰さが指摘できます。

 原発の安全審査を巡るこれまでの報道では、電力会社の準備不足や資料作成が遅いことがよく報道され、安全審査の遅れの責任は電力会社にあるようなトーンが目立ちました。そうした面もあったのでしょうが、私が関係者から聞いている限りでは、規制委員会の側にも責任があります。

 というのは、審査が進む課程で安全基準が最初の内容よりも厳しくなるという“後出しジャンケン”が何度となく行なわれていたようだからです。審査の会合に出席したら、前回までの会合よりも突然厳しい基準を満たすよう要求されれば、電力会社の側も資料の準備などの対応が遅れるに決まっています。

 もちろん、規制委員会が発足してから最初の本格的な安全審査ですから、特に民間人である委員がリスクを負いきれないことを考えると、慎重になるのはやむを得ない面もあります。それでも、やはり規制には客観性や予見可能性が必要であり、それらを欠いたままの審査であったというのは問題ですし、それにも拘らず審査が遅れた責任は電力会社だけにあるかのようにメディアに情報を提供した役所の側も問題ではないでしょうか。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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